介護のやりがいとは?在宅介護と介護職のやりがい

介護を必要とする高齢者の生活は、専門スタッフからの介護と家族からの介護が支えています。

介護保険などを利用したとしても、それだけでは足りずに、ほとんどの子どもが親の介護を経験することになるのです。

そこで今回は、これから介護の仕事に携わる人、親の介護に携わる人に向けて、「介護職員」「親を介護する一人の子供」という2つの視点から、

介護のやりがいや、心にとどめておいてほしい大切なポイントを紹介していきましょう。

介護のやりがいとは?

介護というと、「体力的にも精神的にもきつい」「やったことが報われない」といったように、ネガティブなイメージを持つ方が多いです。

確かに介護をしていく中で、ネガティブな感情が爆発しそうになることもありますが、その一方で間違いなくやりがいも感じられます。

むしろ、このやりがいをしっかりと自覚できると、介護を続けやすくなるかもしれません。

介護職として利用者を介護するやりがい

介護職の現場は人手不足に悩まされているところも多く、どうしてもひとつひとつの仕事が「作業」になってしまいがちです。

確かに食事の介助、排泄の処理、ひとつひとつは単なる作業かもしれませんが、それだけ介護職というのは、人と密接に関わる仕事です。

そして、介護を通して、1人1人の人生を支える仕事とも言えます。

私が介護職としてやりがいをよく感じるのは、施設へ入所した当初は他の利用者の方とも打ち解けられず顔を伏せがちだった方が、少しずつ施設での生活に慣れていってくださることですね。

施設での生活に慣れるということは、そこで安心して暮らしてもらえているということですから、長い時間そばにいる介護職員としてはやりがいを感じるものです。

こんなにたくさんの高齢者の方と、密に関係を築き、人生の支えとなれる仕事はそうたくさんありません。

老人ホームは、ただ介護をする人とされる人とではなく、いい人間関係が築けたと感じたときは「この仕事をやっていてよかった」と思える瞬間です。

子供として親を介護するやりがい

介護職として高齢者を介護する場合、そこにはお給料が発生しますし、利用者の方から感謝の言葉をかけていただけることも多いです。

しかし、子供として親を介護する場合、当然お給料が発生するわけでもなく、「親と子供」という関係上、感謝の言葉をかけてもらうことも少ないかもしれません。

子供として親を介護する場合、やりがいを感じられないという方は非常に多いです。

始めは親孝行のつもりで頑張れても、「やってもらって当たりまえ」のような態度が続けば、どんな人もその行動が無意味に思えてしまうでしょう。

もちろん、「いつもありがとうね。」と声をかけてくれる良好な関係を築けている親子もいるかもしれません。

しかし、言葉で言わなくても思ってるから大丈夫と考えている人や、気持ちを言葉で表すことが苦手な高齢者は多いのです。

私は、一人の子供として父の介護に携わった経験もありますが、正直言えば親の介護にやりがいを感じたことはありませんでした。

最初は親への恩返しと考えてやりがいを感じていましたが、親の反応がなければそのやりがいもあっという間に消えてしまいました。これが本音です。

介護をしていてどんな時に良かったと感じる?

やりがいに通じる部分もありますが、もう少し具体的に介護をしていて良かったと感じた部分を紹介しましょう。

介護職として介護をして良かったと感じられる部分

介護職として高齢者の介護に携わる中で、良かったと感じられる部分は、とても多いと私自身思っています。

・利用者の方に「ありがとうね」と言ってもらえる

介護の仕事をしていく中で、「ありがとう」と声をかけてもらえることは本当に多いです。

利用者の方にもよりますが、食事介助をするたび、排泄介助をするたび、なにかひとつ介助をさせていただくたびに、満面の笑みで「いつもありがとうね。」とおっしゃってくださる利用者の方もいました。

・ご家族の方に「ありがとうございます」と言ってもらえる

介護職をしていると、利用者の方だけでなくそのご家族の方にも感謝されることがあります。

自分の仕事があり、家庭もあるような方が親の介護を在宅でするのは、何かと難しい部分が多いです。

中には介護がきっかけで仕事を辞めたり、家庭環境が悪化してしまうことだってあります。

そんなとき、高齢者を預かれる施設やサービスは、入居する利用者だけでなく、その親を支える家族にとっても大きな支えとなります。

もちろん、「今まで親の介護をしてくださってありがとうございます。」という意味で声をかけていただくこともありますが、

「こちらの施設には、親だけでなく私達家族も支えていただきました。」とおっしゃっていただけることもあり、その言葉を聞くと本当に嬉しい気持ちになります。

・介護の少しの工夫が解決策になる

介護は「人対人」の仕事です。

食事を食べてくれない、下着を交換してすぐに排泄をしてしまう、など悩むポイントがあった場合、解決策は人によって異なります。

問題が起こるたびに、「食事の時間を少しずらしてみる?」「1日の排泄のタイミングを図ってみて、それに合わせて下着交換をしたらよいのでは?」といったように、解決策を考えます。

私は、自分で考えた解決策で問題が解決でき、今まで食事を食べてくれなかった人が美味しそうに食べている姿を見たりすると、「やった!!」と心の中でガッツポーズをしています。

子供として親を介護をして良かったと感じられる部分

私は、子供として父の介護をしてやりがいを感じませんでした。

しかし、やりがいは感じずとも、やはり育ててくれた親への恩はありました。

私が子供として親を介護して良かったのは、何よりも自分の中で「親への恩は返せたかな?」と思えたことでした。

もしも、親の介護にしっかりと向き合わず、他の兄弟に介護を丸投げしていたら、きっと父が亡くなったときに「恩返しができなかった…。」と私は後悔したでしょう。

もちろん、介護の負担は相当なものでしたが、それでも父が亡くなったときに「恩返しができたよかった。」と思いました。

介護をする上で大切なこととは?

介護の仕事、親の介護は決して楽なものではありません。

肉体的にも精神的にも、堪える部分があるのも事実です。

だからこそ、これから介護をする上で覚えておいてほしい大切なことがあります。

介護職として介護をする上で大切なこと

介護職として介護をする上で大切なことは、たくさんあります。

利用者の方の安全を確保する、利用者の尊厳を一番に考える。

他にも山ほどありますが、私が大切にしているのは「できることは、してもらう」ということです。

介護サービスの利用者の方は、なんらかの手助けを求めていますが、その内容は人それぞれです。

食事、排泄、移乗、日常生活の多くの行動が難しい利用者の方もいれば、食事の介助だけ必要な利用者の方もいます。

高齢になると使わない機能はどんどん衰えていきます。

だからこそ、自分でできることはしてもらい、できないことに絞って介助をすることが大切なのです。

これは、介護職員初任者研修でも最初に学ぶ、いわば基礎中の基礎です。

しかし、人手不足で大忙しな現場では、利用者が自分でするのを見守りきれず、職員が代わりにしてしまうことが多いです。

その職員がした一回の過剰な介助が積み重なることで、利用者の身体機能を低下させていることを自覚しなければいいけません。

もちろん、今の介護現場においてこの考え方は「理想論」でしかないかもしれません。

しかし、この考え方を実現できなくても、いつまでも胸にとどめておくことは可能なはずです。

子供として親を介護する上で大切なこと

子供として親を介護する場合に、特に心配なのが自分の人生を犠牲にしすぎてしまうことです。

親への恩を強く感じている人ほど、献身的に介護をします。

しかし、介護は時間も体力もお金も消費します。

介護で大切なのは、人に頼ることです。

子供だけで親を介護するのではなく、妻、夫、ご近所さん、そして介護サービス、ありとあらゆるものを頼って、負担を少なくしながら介護することを心がけてください。

どんな人が介護に向いてるの?

これから介護職に従事しようと考えている方、親の介護をしなければいけない方の中には、「私に介護が向いているかな…。」と不安になっている方もいらっしゃるでしょう。

どんなことにも向き不向きはありますが、具体的に介護にどんな人が向いているのか紹介しましょう。

介護職に向いている人

介護職といえば、高齢者と向き合う仕事ですから「優しい人」「お年寄りが好きな人」が介護職に向いていると考えられることが多いでしょう。

もちろん、こういった部分もあると思いますが、実際に介護職として働いて思うのは次のようなポイントです。

・コミュニケーション能力が高い

ここでいうコミュニケーション能力というのは、どちらかというと利用者の方とのコミュニケーション能力よりも、職員同士のコミュニケーション能力のことです。

介護の仕事はチームプレイですから、しっかりとお互いにコミュニケーションを取り、円滑な人間関係を築くことが仕事の良し悪しにも繋がってきます。

・小さなことにも気付ける

介護が必要な方は、体調の小さな変化がきっかけで、命の危機に陥ってしまうことも珍しくありません。

「なんだかいつもより右腕を気にしているように見えるけど…。」「前より言葉を喋りにくそうにしているような…。」そんな小さな変化への気づきが、利用者の方の命を救うことに繋がります。

人生の大先輩である利用者の方は、見ていないようでしっかりと、職員ひとりひとりの言動や行動を見ています。

体調の変化だけでなく、小さな心配りを積み重ねられるような人は、自然と利用者の方とも良好な関係を築きやすいですね。

・排泄介助、食事介助に抵抗感が少ない

介護の仕事もさまざまで、中には訪問入浴など排泄介助・食事介助には一切関わらないケースもありますが、多くの場合は施設や訪問先で排泄介助・食事介助に携わります。

どうしても排泄介助や食事介助は、潔癖の方にとっては非常につらい業務になります。

逆、最初こそ抵抗感があっても、すぐに排泄介助や食事介助に慣れてしまえるのであれば、それだけでも介護に向いているといえるかもしれません。

親を介護するのに向いている人

たくさんある仕事の中から介護という仕事を選ぶのとは違い、子供はなかば強制的に親の介護に向き合わざるを得なくなります。

そのため、向いていようが向いていなかろうが、どうにかして親の介護をしなければいけないという方がほとんどでしょう。

向いているかどうかというより、どう向き合うかになります。

大前提として、自分の人生を大切にした上で親の介護をすることです。

自分一人で介護をせずに、無理だと感じたら平気で親を施設に預けたり、介護サービスを利用できる人のほうが、精神的・肉体的な負担を背負わずに、自分の人生を大事にしながら介護をできる人だといえるでしょう。

介護に疲れた時はどうしたらいい?

自分のもっとも身近な親と長い間向き合う介護を続けていれば、必ず「疲れた。」と感じるものです。

これは、どんなに介護職に向いている人、親の介護を上手にこなせる人でも例外ではありません。

大切なのは、疲れたと感じたときにどういう対応をするかです。

介護職として「疲れた…。」と感じたとき

「疲れた…。」という言葉にも、いろいろな感情が込められていますよね。

「昨日は入浴介助をたくさんしたから、疲れたなぁ!」「職員同士の人間関係が悪すぎて、疲れた…。」「人手不足で、一人の仕事量が多すぎて疲れた…。」など。

ひとつひとつの「疲れた」にあった対応を紹介していると、膨大な量になってしまうので、今回は介護職を続けている私が一番記憶に残っている「疲れ」について、お話します。

私は、比較的他人に感情移入しやすいタイプの人間です。

そのため、介護職を始めた頃は、利用者さんが「家族が全然会いにきてくれなくてね…。」と悲しそうに話せば、私も悲しくなっていました。

そして、施設へ入居している利用者さんが亡くなれば、自分の大切な人が亡くなったのと同然のように悲しんで、常に周囲にいる利用者さんの感情に自分の感情も引っ張られて疲れてしまっていたのです。

昔からおじいちゃんおばあちゃんが好きだったり、周りから「あなたは優しいから、きっと介護職に向いているよ!」と言われるような人は、私と同じように感情移入しやすいかもしれません。

「利用者の気持ちになる、利用者に共感する」これはとても良いことですが、それで自分の感情まで引っ張られていては、常に疲れを抱えているような状態になってしまいますよね。

仕事中に利用者さんに共感するのはまだ良いですが、仕事で共感して心に生まれたネガティブな感情、重い感情を自分の私生活にまで持ち込んでいては大変です。

そこで、私は自分なりの気持ちのスイッチを作りました。

方法は簡単で、自分の職場の直ぐ側にある曲がり角をスイッチポイントにしただけです。

仕事へ向かうときは「この曲がり角を曲がったら仕事モード!」、仕事から帰るときは「この曲がり角を曲がったら、もう仕事のことは考えない!」と自分に言い聞かせながら、通勤を繰り返しました。

効果を実感するまで1ヶ月ほどかかりましたが、今ではしっかりと気持ちのオンオフができ、仕事で気持ちが沈んでしまったときも、自宅に着く頃には気持ちを切り替えおえて、家事をしたり趣味に没頭することで「疲れた…。」という気持ちを引きずることは少なくなっています。

親の介護をして「疲れた…。」と感じたとき

親の介護をして「疲れた…。」と感じたなら、介護サービスを利用してください。

親の介護に疲れて、それでも「自分がやらないと…。」と必要以上に自分を追い込んでしまい、親が倒れる前に自分が倒れてしまうという子供は少なくありません。

子供が率先して親を介護するのは、素晴らしいことだと思います。

しかし、親の介護が必要になる頃には、自分の仕事や家庭を持っていることがほとんどですよね。

そんな状態で親の介護をすべて自分でするというのは、無理があります。

一番理想的なのは、疲れたと感じる前に介護サービスを利用して、なるべく肉体的にも精神的にも負担の少ない介護環境を整えることですね。

まとめ

介護職として高齢者と接する人、親の子供として日々の介護に汗を流す人、いずれにしても介護には大きな負担がつきまといます。

そんな中でも、介護にやりがいを感じて天職だと思う人もいれば、毎日「疲れた…。」と感じながら、介護を続ける人もいます。

自分対利用者の方、自分対親、自分対職員。とにかく介護というものは、人間関係が大きく関わるものであり、一人ひとりが考え方も違うわけですから、介護に対して感じることが一人ひとり違うのも当然ですよね。

介護職員として利用者の方の介護に携わり、子の立場から親の介護にも携わった私から、皆さんに伝えたいことはたくさんありますが、まずは介護をする中で利用者や親はもちろんですが、自分自身を大切にする気持ちは忘れないでください。

疲れた人から介護をされるより、元気で幸せな人から介護をされた方が心地いいのは間違いありません。

自分が元気でいられるような介護をするようにしましょう。

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