ユニットケアとは?

親に入居してもらう老人ホームを探していると、「ユニットケア」という聞き慣れない言葉を耳にすることはありませんか?
なんとなく介護職員やケアマネジャーの説明にうなずきながらも、話の流れについていくのがやっとで聞きそびれてしまうこともたくさんあります。
そこで今回は、ユニットケアの特徴やメリット・デメリットについて紹介していきましょう。
ユニットケアとは?
ユニットケアというのは、施設に入居する一人ひとりの利用者に合わせた「個別ケア」を実現するための介護手法、施設のスタイルのことです。
老人ホームと聞くとどのような光景をイメージするでしょうか?
食堂に利用者全員が集まって、一斉に食事をとる光景。
ひとつの部屋の中にベットが数台あり、その中で高齢者が生活している光景。
順番に排泄介助を受けている光景。
このように、老人ホームで多くの利用者が「集団生活」をしている光景をイメージする方が多いでしょう。
一見するとなんら問題のないように思えるかもしれませんが、集団ケアというのは「利用者の生活の質」ではなく「職員側の作業効率」に配慮された仕組みなのです。
老人ホームで働く職員は、利用者にまとまって食事をしてもらったほうが効率的に介助ができます。
最低限の介助をするのであれば集団ケアでもよいかもしれませんが、介護の世界でも試行錯誤が重ねられていく中で職員側ではなく、利用者の生活の質を高める個別ケアが求められるようになったのです。
そんな利用的な生活スタイルを実現するのが、個別ケアだといえるでしょう。
ユニットケアの特徴は?
ユニットケアにおいて一番の特徴となるのが、利用者が一人で過ごせる「個室」があることです。
さらに、利用者は10人前後でひとつのまとまった「ユニット」として生活を送ります。
ひとつのユニットのフロアには10部屋前後の個室があり、中心部分に「居間」のように使用できる共用スペースが設けられているのです。
また、一般的な老人ホームだとひとつの施設内で多くの職員が働いていますが、ユニットケアの場合は、ひとつのユニットに対して配置される職員が固定されています。
いつも同じ職員と関わることで、親しみを感じながら生活できるのが最大の特徴です。
こういった環境のもとユニットケアでは、利用者ひとりひとりの生活リズムや個性に合わせた介護が実践されています。
例えば、一般的な老人ホームだと起床の時間や食事の時間が決められていますが、ユニットケアなら利用者のタイミングで起きて、食事を食べられるのです。
ユニットケアの特徴をまとめていうなら「施設でも自宅にいるときと同じように自由な生活を送れる」ということです。
気になるユニットケアのメリット・デメリット
「個室と居間」「10人前後のユニットでの生活」「固定配置された職員」といった特徴がユニットケアにはありますが、これによって、どのようなメリット・デメリットが生まれるのか詳しくみていきましょう。
ユニットケアのメリット
ユニットケアのメリットとしては、次のようなものがあげられます。
- 個室と少人数制により、自由度の高い個別ケアを受けやすい
- 1ユニット10人前後で、職員の目も届きやすい
- 人数が少ないおかげで、一緒に生活する入居者を家族のように感じられる
- 毎日顔を合わせる人が同じなので、変化が苦手な方でも安心して生活しやすい
- 個室でのプライベートがありつつ、共用スペースでコミュニケーションもとれる
- 職員が固定されているので、親しみを持ちやすい
- 入居者の家族も個室で人目を気にせず面会できる
- 個室があることで、施設内のリスクを軽減しやすい
特徴としてもあげましたが、ユニットケアのメリットとして見逃せないのが、個別支援を受けられるという点でしょう。
大勢の利用者が一同に集まって生活するようなスタイルだと、介護職員としても、効率を重視しないと業務をスムーズに進められません。
一方でユニットケアであれば、少人数なので、その方に合ったアプローチや声かけができて、「ちゃんと見てもらえてる」という実感が伝わりやすいのです。
また、「一人になりたい。」「ゆっくりしたい。」という場合は個室で生活をし、誰かと話したいと思ったら共用スペースに出向くといったことができ、「自分だけの時間」と「誰かとの時間」どちらも過ごせるのです。
ユニットケアのデメリット
メリットが多いユニットケアですが、個別ケアを重視する以上デメリットも存在します。
- 従来の施設と比べると、費用の負担が大きい
- ユニットで一緒に生活している入居者とトラブルが起きると気まずくなる
- 個室があるせいで孤独感を感じやすくなる
一般的に想像される従来型の老人ホームと比べると設備が充実しており、個室での生活時間もあるため居住費や光熱費が高くなってしまいます。
また、個室があることでプライベートな時間・空間を手に入れられますが、その一方で従来型の老人ホームよりも孤独を感じやすいという方もいます。
個室から一歩出れば共用スペースですから、誰かと触れ合うタイミングは十分にありますが、従来型のような賑やかな雰囲気とは少し異なります。
ユニットケア施設の食事は特徴的?
ユニットケア施設では、自宅にいるかのような生活を味わえますが、中でも食事が特徴的な施設が多いです。
従来型の施設であれば、食事の時間になれば利用者が一斉に食堂に集まり、目の前に並べられた食事を食べ、食べ終わったら職員が後片付けをします。
しかし、ユニットケアでは食事の盛り付けから利用者の目の前でするケースが多く、自立度の高い方は自分で盛り付けをすることもあるのです。
ときには利用者が台所に立って、ちょっとした料理をすることもあります。
食事を食べ終わったら、自分で食器を洗う方もいます。
自立度が低く、料理はできない、食器を洗えないないという方でも、料理をする音や食器を洗う音を耳にしているだけで自宅にいる気分を味わえるでしょう。
親を預ける子からすれば、「利用者に料理や食器洗いをさせるなんてどうなの?」と不満に思われるかもしれません。
しかし、料理をすることや盛り付け、皿を洗うことは、指先を使うだけでなく、頭も使います。
日常の当たり前のことをやることが、今ある機能を保ち続けることにつながり、やりがいが生まれ、健康寿命にもつながっていくのです。
ユニットケアがおすすめなのはどんな人?
メリットがたくさんあるユニットケアは、多くの高齢者にとって魅力的な生活環境だといえますが、特に次のような人におすすめです。
- プライベートの時間・空間をしっかりと持ちたい人
- 人前で排泄介助などをされるのに抵抗がある人
- 人と接するのが好きな人
たとえ介護が必要になったとしても、自分の時間や空間を大事にしたいという人にとっては、ユニットケアの個室はとても向いています。
また、個室があることで他人に見られたくない排泄介助などを、介護職員以外に見られる心配も少ないです。
生きていく中で、自分なりの強いこだわりを持っているという人もいるでしょう。
従来型の老人ホームだと、介護職員が対応しなければいけない利用者の数が多く、職員も入れ替わり大勢の人から介護をうけていました。
少人数制のユニットケアは、個別ケアを目的に作られたものですから、顔なじみのスタッフからサービスを受けることになります。
高齢者の好みや趣向を知った上で関わるため、スタッフとも近い関係を作ることができ、その結果、細やかなサービスが受けらえるのです。
まとめ
老人ホームと聞くと、何となく「1人の人として扱ってもらえないのではないか?」と、ネガティブなイメージが先行しがちな方も多いです。
しかし、少人数制のユニットケアは、担当者が固定だったりと「職員と利用者」「利用者同士」の距離が近いので、親身になりやすいと言えるでしょう。
介護の本来の姿である、温かみのある関係を求める人には、ぴったりです。
従来の老人ホームでは「こんな希望を言っても聞いてもらえないだろうな。」ということも、個別ケアを重視するユニットケアなら対応してもらえることもあります。
従来型よりも高い費用面をクリアする必要はありますが、それに見合ったサービスが受けられるのがユニットケアという新しい形の介護です。