ユニット型(新)特養とは?従来の特養との違いは?

 

特養(特別養護老人ホーム)は、公的な介護施設であり、安価なことから人気があり、入居待機者の多いことでも知られています。

その特養は、大きく従来型とユニット型のふたつのタイプに分かれます。ここではユニット型特養について詳しく紹介します。

従来の特養との違いは?

ユニット型の特養というのは、高齢者一人一人が個室を利用することのできる施設のことです。

というのも従来型(古いタイプ)の特養は個室ではなく、4人が一つの部屋を使う、つまりは4人部屋が一般的でした。

それが、2002年度から制度化され、個室タイプのユニット型特養が増えてきたのです。

高齢者にも当然ですが、プライバシーがあり、それを尊重した形となりました。

有料老人ホームなどは、以前から個室タイプのものがほとんどでしたから、特養も21世紀に入ってようやく、他の介護施設に追いついてきたといっていいでしょう。

ユニット型特養の趣旨は、プライバシーの尊重はもちろんのこと、個室となることで、家庭的な雰囲気の中で個別ケアを行うことを目標としています。

また、個室ケアを念頭に置いていますが、入居者10人程度を一つのユニットと考えて、常に同じ入居者が生活を共にし、決まったスタッフがケアを行うといった、共同生活を基本理念としている介護施設が特養なのです。

※従来型の特養にも個室タイプがありました。しかし、「ユニット型」タイプではなく、狭い個室がほとんどといった状態だったのです。

・ユニット型ケア(ユニット型特養)の必要性

従来の特養は、集団ケアが一般的でした。

それはより安くより効率的に老人介護を行うことが最優先されていたからです。

とりわけ、安価な面が強調されていたのは間違いないでしょう。

しかし、そうなるとより多くの要介護者(高齢者)の介護を行わなくてはいけないため、効率性が優先されることになりました。

そして、必然的にスタッフ側の事情に合わせた形の、集団ケアが常態化されていったのです。

具体的には、入居者一人一人のペースには関係なく、食事の場合を例に取ると、次から次へと食事が入居者の口に運ばれるといった、ベルトコンベア式の食事となり、浴室での入浴介護も同じようなことになっていったのです。

ユニット型特養はプライバシーを重視

従来型の特養は、より多くの高齢者を入所させるために、多人数部屋が主流となりました。

そのため、プライバシーが守られない、個人の尊厳が保たれないといった声が必然的に高まっていったのです。

そこで、集団ケアではなく「個別ケア」の必要性が高まり、高齢者の尊厳に十分に配慮する介護サービスが提供されるべきという考え方が主流となりました。

それを受けて厚生労働省では、入居者の尊厳とプライバシーを重視した個別ケアを実現するため、

2001年に全国の特養を「全室個室・ユニットケアへ整備をしていく」と発表し、現在に至るまでユニット型特養が推奨されていったのです。

実質的にそれ以降の特養はユニット型個室ケアとなり、従来の特養も随時改修されていきました。

●ユニット型特養の住環境

前述していますが、「できるだけ自宅に近い住環境を実現すること」を理念としています。

入居者の部屋は全て個室となっていて、10室程度を一つのユニットとして、それぞれが利用できる共有スペースが配置されています。

さらに、一つのユニットには専任の介護スタッフが介護サービスを行います。

ユニット型の場合個室の広さは13.2㎡以上とされています。

●ユニット型特養の入居条件は?

従来型、ユニット型に関係なく特養の入居条件は以下になります。
・65歳以上で要介護度3以上
・40歳から64歳で特定の条件を満たした人(要介護度3以上)
・特例により入居が認められた人(要介護度1,2の人)
※条件に合っても特養側の事情によって(主に受け入れ体制)入居できない場合があります。

また、月額費用が安価であるため、有料老人ホームと比べて申し込みが多く、そのため待機待ちも少なくありません。

入居待ちについては、入居条件を原則要介護度3以上に上げたことによって、待機待ちが若干緩和されています。

●ユニット型特養の費用は?

特養は、入居に際しての一時金は一切不要です。

ここが民間の有料老人ホームとは大きく違うところです。

そのため、費用面では入居に対してのハードルは低く、入りやすい介護施設といえるでしょう。

月々にかかる費用のみを考えればいいのですから、入居後の生活設計も立てやすいといえます。

月額費用の内訳は以下の通りとなります。

・介護サービス費(介護度が高いほど高額になります)
・居住費
・食費
・日常生活費

特養のタイプ別月額費用を以下に示します。

タイプ     月額費用
従来型個室     96,360円
多床室       87,060円
ユニット型個室  123,360円
ユニット型準個室 113,460円 (ユニット型個室的多床室)←こちらの名称を使うことが一般的となりました。
※ユニット型準個室は、天井と壁の間に隙間があるなど、一つの部屋を仕切りなどで区切っているタイプです。

●ユニット型特養のサービスは?

従来の集団介護とは違い、一人ひとりの生活スタイルや個性といったものを重視し、高齢者の生活リズムに合わせた個別ケアを行うものです。

高齢者のプライバシーと尊厳を重視し、自立を促すものとなっています。

とはいっても、特養への入所条件は要介護度3以上(場合によっては要介護度1、2の人も入所可能)となっていて、多くの人がある程度の手厚い介護サービスを必要としています。

介護度よりも、一人ひとりの状態によって介護サービスの内容も変わってくるので、それぞれにあった介護サービスを実践しているのです。

その点が、従来型特養の集団介護とは大きな違いとなっています。

一人ひとりが個室での生活となり、入所者どうしのコミュニケーションは共同スペースなどで行うようになっているのです。

また、ユニットごとにキッチン・食堂・リビングといった共有スペースがあります。

共有スペースは居室と隣接しているので、それぞれの居室が共有スペースを囲っているような間取りが一般的です。

介護スタッフやユニットごとの専任となっているので、一人ひとりの状態によって行き届いた介護サービスを行うことができます。

一人ひとりの生活が重視されていますが、基本的には共同生活が根底にあるのは、従来型の特養と同じ理念といえます。

●ユニット型特養のメリットやデメリットなど

ユニット型特養のメリット・デメリットを以下に示します。

・ユニット型特養のメリット

①入所者一人ひとりの状況に合った個別ケアを行う
②少人数制となるので、一人ひとりに行き届いた介護サービスができる
③気持ちに寄り添うことで認知機能低下の進行の軽減、問題行動の軽減が期待できる
④共同スペースでの入所者同士のコミュニケーションが図れる
⑤全室個室となるので、プライバシーが保たれる
⑥個室のため、家族が面会しやすい
⑦集団で体調崩すリスクが軽減される
⑧24時間介護サービスを受けることができる
⑨終身入所
※ユニット型特養が推奨されるようになったのは、プライバシーなどの問題もあるのですが、入所条件である要介護度を上げたことも大いに関係しています。原則として要介護度3以上の人が入所するので、きめ細かな介護サービスを提供する必要があるからです。また、終身入所については、できない特養もあります。

・ユニット型特養のデメリット

①マンツーマンでの介護サービスの提供となるので、人間関係のトラブルが起きたときに気まずくなる
②建築コスト、改修費用がかさむので月額費用(入所者負担)が増える
③人によっては孤独感を感じることもある

デメリットは費用面と人間関係に関わることとなります。多くの場合はユニット型特養ではメリットのほうが多いといえるでしょう。

●まとめ

多くを説明していませんが、特養で受けることのできる介護サービスは、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」が各都道府県で定められています。

それに則って、食事・入浴・排せつ・日々の管理と緊急時の対応・リハビリ・生活支援・レクリエーション・イベント・などの各種介護サービスを受けることができます。

これは従来型もユニット型も関係なく、特養の介護サービスとして利用できるということです。

新規で建設されている特養は、ユニットタイプなので、今後はユニットタイプの特養の数が増えていくでしょう。

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