老人ホームで起こりうるトラブルとは?

介護する側と介護される側のいざこざなどが取りざたされますが、入居者同士のトラブルや、介護とは関係なく施設側とのトラブルなどもあります。

これまでとは生活環境の違う高齢者が集まるのですから、相性の合わない高齢者同士のトラブルも少なからず起こるでしょう。

高齢になると性格が丸くなると思いがちですが、いっぽうで頑固になる傾向もあるとされ、そのため人間関係のトラブルが起きやすいとされているのです。

それには、認知機能が低下したことなどによるトラブルもあるでしょう。

ここでは、老人ホームで起こるトラブルについて、事例を含めて紹介します。

老人ホームでよくあるトラブルとは?

老人ホームのトラブルは、人間関係と施設の2つに分けられます。

人間関係については、さらに、入居者同士とスタッフと入居者とに分けられ、ケースごとに事例をまとめてみました。

介護施設に関するトラブル

介護施設とのトラブルに関しても起きうることです。

・施設から退去を迫られる

終の住み処としての機能を有する特養などの老人ホームもあるのですが、老人ホームの多くは介護サービスを提供する場です。

そのため、個別での特別な支援やサポートの必要が出てきた入居者については、退去を迫る場合も少なくありません。

入居時の契約にも書かれていることですが、実際にそういった場面になるとトラブルは避けられないことが多いのです。

万が一体調を崩し、一時入院していたとしても、そこからそのまま退去になる場合も多く、それもトラブルを誘う要因となることが多いのです。

・費用に関するトラブルも…

費用に関するトラブルで多いのが、「退去の際に返金されると思っていた入居の際の一時金の返金がなかった…」というものです。

「入居一時金」というのは、施設を利用するための利用権を購入する預け金という位置づけとなっています。

そのため、老人ホームを終身利用せずに、途中で退去した場合は入居の際に支払った一時金は返金されるようになっています。

とはいっても、返金の仕組みは老人ホームによってまちまちですから、入居時の契約内容にもよります。

返金の仕組みが施設によって異なっているため、先入観からの思い込みがトラブルの元となることが多いのです。

・月額費用の問題

老人ホームの月額費用は、受けている介護サービスなどによって変動します。

また、水道光熱費なども定額ではなく、季節によって変動することも仕方ないことでしょう。

オムツ代などは実費ですから、使用量が多くなれば、これについても費用が変動します。

そのため、入居時にパンフレットにかかれている月額費用と実際に請求される月額費用に大きな差異があれば、それもトラブルの元となるのです。

施設側の説明不足、入居者の理解不足なども要因となるため、双方がしっかりと話し合うことが大切です。

・老人ホームのサービス内容が違う

老人ホームのサービス内容が当初聞いていたことと違うというトラブルは少なくありません。

入浴回数でも、週3回の入浴介助が行われることが明記されていても、実際は週2回だったということでは、これはトラブルになってもしかたないでしょう。

細かなことでは、食事の開始時間が違う、就寝時間、起床時間が違うといったこともトラブルの原因となります。

多少の意思疎通の乖離はあったにしても、入浴回数などは生活スタイルが大きく変わってくるので、老人ホーム側に説明を求めたほうがいいのは間違いありません。

●認知機能低下などのトラブル

特養など、介護が重くなってから入るタイプの老人ホームでは、高齢者の多くが認知が低下していることも少なくありません。

そのため、特養の介護サービスの多くは、その現状に関する介護とも言えるでしょう。

老人ホームなどの施設側では、より良く安心して入居者が生活できるように万全の体制で介護サービスを行っています。

認知機能低下による状況は、1人1人違うため、一人ひとりにあった介護サービスが必要となります。

入居者ごとに、頻繁に情報を共有したり、ケース会議をして支援の方向性を整えても、

それでも、介護サービスに馴染まず、施設側、介護スタッフとトラブルになるケースもあるのです。

想定外のトラブルが起こった時に、適切に対処するためには、認知機能が低下したときに起こりうるトラブルに対処できていることが不可欠です。

日常のトラブルに対処できてこそ、イレギュラーなトラブルにも対処できるもの。

そのために、怒りうるトラブルと解決策を紹介していきます。

・徘徊癖などの対策

認知機能が低下することによ行動で多いのが、徘徊癖です。

以前の特養でしたら、集団ケアが行われていて、他の入居者の迷惑にならないよう、夜間の徘徊をできなくするためにベッドに縛り付けるといったことも普通に行われていました。

現在はそういったことを行うと、高齢者虐待となってしまいますので、法律で原則禁止とされています。

しかし、徘徊癖の中には、命に関わるようなことな状況もあります。

緊急時や命の危険などの場合は、必要最低限の身体拘束が認めらているのですが、例え必用だとしても、施設側の裁量として人権などに十分に配慮して行わなければいけません。

もし、身体拘束をしなければならない状況になったとしても、事前に家族に同意を取ることがほとんどなので、心配し過ぎる必要はないでしょう。

現在の老人ホームは個別ケアが一般的となっているので、高齢者にあった介護サービスが実践されています。

また、「鍵がなければ動かないエレベーターの導入」などの、ハード面でも徘徊対策ができてきました。

1人の人として尊重された介護を受けられるかどうかは、こういった設備や施設の運営方針が大きく関わってきます。

いい施設を見つけるには、直接こういった場合の対処や対策を聞くことです!

しかし、1つ1つの老人ホームに確認するのは現実的ではないので、インターネットを利用した情報収集を行い、いくつかに絞った上で個別に説明を聞くのがおすすめです。

・帰宅願望が強い

老人ホームの生活に慣れずに、帰宅願望が強まる高齢者も少なくありません。

進行の程度にもよりますが、幼児返りを起こす高齢者もいて、なおさら帰宅願望が強くなってしまうのです。

自宅で介護できればいいのですが、それがかなわずに老人ホームに入所しているのですから、帰りたいという帰宅願望をなくさせる努力を施設側でもしっかりと行わなければいけません。

・イベントの参加を呼びかける

認知機能が低下している高齢者には、できるだけイベントに参加してもらうようにします。

季節ならではのイベントもありますし、レクリエーションへの参加は脳幹を刺激することで、認知機能低下の進行を抑える効果もあります。

介護スタッフも目を離すことなくついているので、イベントへの参加は認知機能の維持や低下防止を考えるうえでも、最善の方法と考えて良いでしょう。

●入居者同士のトラブル

老人ホームは個室での生活となりますが、食事など日々の行動について、基本は集団生活となります。

それまでの生活習慣の違う高齢者が集まるのですから、自分とは違う習慣を持つ人はどうしても気になってしまうものです。

気になるだけならいいのですが、いつの日か口に出して注意してしまう事態になってしまうこともあります。

とっくみあいのケンカになることは少ないと思いますが、陰で噂を立てるなど、介護スタッフのわからないところで、入居者間の確執ができる場合もあります。

明らかな入居者同士のトラブルは、レクリエーションのグループを分けたり、食事のテーブルも離れた位置にするなど、入居者同士をできるだけ遠ざけるなどの処置が講じられることも対策の1つです。

抜本的な解決策は、入居者同士が話し合うことで和解をすることですが、双方が認知機能が低下している場合は、なかなか解決しないことも少なくありません。

そういった場合は、先ほども紹介したように、時間や距離をずらして、できるだけ顔を合わせないなどの処置を取ることが多くいのですが、それでも難しい場合は、入居施設を替える場合もあります。

●恋愛トラブル

高齢者の異性間トラブル、というのも少なくありません。

男性と女性ですし、毎日交流があるのですから、好意を持つことも十分に考えられるのです。

入居者間の恋愛については施設側はどのような対策や処置をとっているのでしょうか。

・暖かく見守る
男女間のことですから、恋愛感情が芽生えるのは年齢に関係なく自然発生的に起こるものです。

恋愛感情を抑制するのではなく、施設側の対応としては、まずは見守ることが大前提となります。

理性があればいいのですが、理性よりも本音で動いてしまう場合は、やはり施設側も目を光らせなくてはいけません。

稀な例かもしれませんが、婚姻するケースもあるようです。

お互いが相思相愛であれば施設側としても、そこは見守っていくしかないのが現状です。

・一方的な片思いの場合

どちらかが一方的に相手を好きになっている場合もあります。

好意を持っているだけで片方には恋愛感情がないのであれば、それ以上進展することはないでしょう。

しかし、片思いをしている側は情緒不安定になることも考えられますし、体の状態が悪化するケースもあるようです。

この場合も施設側のケアが必要になるのはいうまでもありません。

・三角関係など

難しいのが三角関係です。この場合、ずっと平行線で仲良くやっていければいいのですが、関係が進展することで誰かが傷ついてしまうこともあるのです。

認知機能低下が進んでいると、どうしても感情が爆発してしまうケースもあるので、施設内でかんしゃくを起こすようなケースもあります。

これについても、施設側の丁寧な対応が必要になります。

日々楽しいイベントに参加してもらうなどで、意識を逸らせることが大切ですし、恋愛対象の人、あるいは恋敵の人に敵意が向かないようにしなくてはいけません。

●介護施設側と入居者間のトラブル

介護施設側と入居者のトラブルも少なくありません。

また、介護サービスなど介護方針の考え方の違いで、介護施設側と家族とのトラブルも多く発生しているのです。

施設側とのトラブルとなると、入居費用や月額費用など、主に金銭面でのトラブルを思いがちです。

しかし、介護についてのトラブルもかなり多いのです。

・介護スタッフに嫌がらせをする

これは認知機能が低下した患者に起こりがちなのですが、幼児返りなどもあって、理性ではなく本音で行動してしまうために、男性の入居者が女性の介護スタッフに性的嫌がらせをするケースが多いのです。

これは、入居者に言って聞かせても、改善の余地は少ないと考えていいでしょう。

介護スタッフを男性に替えるなど、施設側の対処が求められるところです。

目に余る行為があり、他の入居者にも迷惑がかかるようなことがあれば、退所を求められるケースもあるようです。

・契約不履行によるトラブル

先述していますが、入浴回数が違う件でのトラブルもそうですが、適切なサービスを受けることができないなど、施設側に問題のあるケースも少なくありません。

ただし、入居者側の理解不足もあるので、入居時の契約内容はしっかりと把握して、施設側と入居者側とで意思の疎通や、契約内容の相互理解などが必要になります。

・金銭面でのトラブル

月額費用などは、利用したサービスや時間によって、変動することがあります。

それがわかっていても、「今月の費用は思っていたより多かった」となると、それがきっかけで不信感をつのらせ、トラブルに発展するケースも少なくありません。

そのサービスは有料なのか、あるいは無料サービスなのか、利用する時々で、契約内容の確認をしたほうがいいでしょう。

気になることはその場で確認するなど、風通し良く意思の疎通をお互いにするようにすると、金銭面でのトラブルは簡単に解決することができます。

●まとめ

老人ホームは仮の住まいではなく、多くの入居者にとっては終の住み処となるところです。

長く住む上で、いい人間関係は欠かせません。

できるだけ不要なトラブルは避けたいものですが、認知機能低下による状態や介護の度合いなどケースごとに違うため、解決しやすいトラブルもあれば、解決が難しいものもあります。

トラブルについては施設側、入居者、家族といった三者が、解決に向けて話し合う、解決できなくても最善策はないかを話し合うことが大切です。

施設をもう一つの家庭、さらには逃げ場のない場所と考えると、トラブルについても真剣に考えざるをえません。

まずは、できることから取り組み、その中で最善策を模索していくのがよいでしょう。

最初のコメントをしよう

必須

CAPTCHA