老人ホームの種類と費用について

老人ホームや介護施設は、その運営主体や目的、さらには入居条件などによってさまざまな種類に分けられます。

高齢者が増え続け、老人ホームや介護施設の需要が増す中で、従来とは違ったさまざまな形態の老人ホームや介護施設ができてきました

理想の老後にぴったりの老人ホームを見つけるには、まずは知ることから。

ここでは、老人ホームや介護施設の種類と気になる費用について詳しく説明します。

老人ホーム・介護施設のさまざまな特徴

老人ホーム・介護施設を運営主体で分けると、公的機関と民間の2つに大きく分けられます。

そこからさらに、利用者の要介護度や目的に応じてさまざまな種類に分けられるのです。

老人ホーム・介護施設の種類をあげながら、それぞれについて詳しく紹介します。

①特養

特別養護老人ホームのことで、公的機関が運営する介護保険施設です。

入居条件:要介護度3以上

費用:入居費用0円  月額費用10万円~15万円

終身:可

 

②サ高住

サービス付き高齢者向け住宅のことで60歳以上から入居できます。

基本的に自立できることが入居条件となりますが、入居してからはある程度の要介護度まで許容できるサ高住が多くなっています。契約は賃貸契約で、入居後に必要に応じて介護サービスの契約を結びます。

入居条件:自立~要介護3

費用:入居費用0円~数十万円  月額費用10万円~30万円

終身:不可

 

③有料老人ホーム

一般的な、民間事業者が運営する介護施設です。介護付き・住宅型・健康型の3タイプに大きく分かれます。

入居条件:自立~要介護5 健康型は自立のみ

費用:入居費用0円~数億円  月額費用15万円~50万円  

終身:可 健康型は不可

 

④ケアハウス

公的機関の他に民間事業者も運営している介護施設です。自治体からの助成を受けることができるので、有料老人ホームよりも比較的安い費用で利用できます。

入居条件:自立~要介護3

費用:入居費用数十万円~数百万円  月額費用15万円~30万円

終身:不可

 

⑤グループホーム

小規模な介護施設で地域密着型サービスに分類されます。認知機能が低下した高齢者を対象としています。

入居条件:要支援2~要介護5

費用:入居費用0円~数百万円  月額費用8万円~30万円

終身:不可

 

⑥老健

介護老人保健施設のことで、在宅復帰を目指す介護施設です。

入居条件:要介護1~要介護5

費用:入居費用0円  月額費用9万円~20万円

終身:不可

 

老人ホームの特徴

次に、それぞれの施設の特徴とメリット・デメリットを紹介していきます。

特養について

常時介護が必要な人が入所する介護施設なので、入居条件が要介護3以上となっています。

常時介護が必要ということで、寝たきりや認知機能の衰えが進んでいる人が対象となります。

特養では、食事・入浴・排せつなどの日常生活を送る上で必要な介護を受けることができ、また、機能回復訓練も受けることができるので、認知機能低下の進行や身体機能などの衰えに対するサービスも受けられます。

自治体などが運営している老人ホームなので、入居費用がかからず、月々の費用も15万円程度と低く抑えられているのが特徴です。

そのため、一般的な老齢厚生年金受給者であっても十分に支払える金額といっていいでしょう。

老齢基礎年金の受給のみの人でも、助成制度があるので入居が可能です。

費用面で老人ホームに入居するのが厳しいと感じている人にとっては、有力な選択肢となるのが特養といっていいでしょう。

①メリット

  • 入居費用がかからない、月額費用も安い
  • 手厚い介護を受けることができる
  • 終の住み処

デメリット

  • 待機期間が長い (緩和されつつあるが、人気の特養となると1年以上待つこともあり)
  • 特別な支援が必要な場合は、退所しなくてはいけないことも(専門資格がないとできない処置ができあになど限定的)
  • 民間の有料老人ホームと比較すると、介護度が重い寝たきりなどの人が多い

サ高住について

介護施設として分類されることが多いのですが、サ高住は賃貸住宅です。

運営は民間事業者(不動産業者)となり、運営側が提供するのは、見守りと生活相談サービス

住宅については高齢者向けなので、バリアフリーは基本でさらに、手すりやスローブなど高齢者が生活しやすい作りになっているのが特徴です。

介護保険サービスは個々で契約を結んで利用するようになります。

サ高住のサービスとしては、他に食事の提供や買い物の代行、かかりつけへの送迎などがありますが、それぞれサービス料は別途となります。

入居時の費用は必要なところ、必要でないところとまちまちです。もっとも入居時の費用は敷金と考えて退所時に戻ってくることが一般的となっています。

メリット

  • ・比較的安価(敷金のみ)で入居できる
  • ・一般的な賃貸住宅と同じで、プライバシーが守られ、自立した生活ができる
  • ・高齢を理由に入居が断られることがない

デメリット

  • ・提供されるサービスの内容は住宅ごとに差が大きいことがある
  • ・介護サービスは提供されないので個別に契約が必要
  • ・あくまでも住宅なので要介護度があがると退所を考えたほうがよい場合も
  • ・認知機能低下には対応していない

有料老人ホームについて

有料老人ホームは、民間事業者が運営する老人ホームです。

公共の老人ホームに比べて費用が高くなりがちとなりますが、住環境や生活支援サービスなどが充実しているので、快適な老後サービスを送れるメリットがあります。

有料老人ホームには大きく、介護付き・住宅型・健康型の3タイプに分かれるのでそれぞれについて説明します。

・介護付き有料老人ホーム

介護保険法の定めるところの、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている老人ホームです。

一般的に要介護度の高い人が入所するイメージですが、自立して生活できる高齢者から要介護度の高い高齢者まで幅広く対応しています。

ここでは24時間常駐している介護スタッフによる食事提供や掃除・洗濯・買い物の代行といった生活支援と、入浴・着替え・排せつなどの介助サービスを受けることができます。

介護が必要なときは、常駐する介護スタッフが介護サービスを提供するスタイルです。

①メリット

  • 介護付きでも老人ホームごとに特色あり。選択肢が多い。
  • 定額制なので費用面で安心
  • 人数に対して介護職員の割り当てが決まっているので手厚いケアを受けることができる
  • レクリエーションやイベントが充実

②デメリット

  • 入居費用がまちまち。中には数千万円かかる老人ホームも。
  • 外部の他の介護サービスの利用ができない。
  • レクリエーションやイベントが多いので、施設ごとのカラーに合ってないと楽しめないことも

住宅型有料老人ホーム

自立した生活ができる人から、要介護者まで幅広く対応している老人ホームです。

食事提供や掃除・洗濯・買い物の代行といった生活支援と、入浴・着替え・排せつなどの介助サービスを受けることができます。

施設に介護スタッフが常駐していないので、介護が必要な場合は、訪問介護やデイサービスなど、外部の介護サービスを利用します。

自立した人のみが利用できるイメージですが、要介護者にも対応している施設が多くなっています。

①メリット

  • 必要なときに必要な介護サービスを受けることができる。
  • 要介護状態になっても生活が続けられる。※一般的に退所しなくてもよい。
  • 介護施設やサービスの選択肢が広い。(一般向けから高級志向まで)
  • レクリエーションやイベントが充実している。

②デメリット

  • 介護スタッフが常駐していないので不便な面も。(ちょっとしたことが頼みづらい)
  • 介護サービスごとに費用が発生。(介護保険の上限を超えると介護費用(請求)が高くなる)
  • 要介護度が進むと住みづらくなることも。
  • 入居費用や月額費用も必要

健康型有料老人ホーム

自立できる高齢者を対象にした老人ホームです。

食事サービスが付いている高齢者施設であり、温泉やスポーツジムといった設備が充実しているところが多く、居室も住宅型に近くプライバシーも守られています。

①メリット

  • 家事から解放され、すべての時間を自分の為に使える
  • 余暇が充実した老後生活を送ることができる。
  • それぞれが独立した世帯とみられているため、自由度が高い

②デメリット

  • 入居費用が高い。(月額費用は施設によってばらつきがある)
  • ・介護が必要になった場合は退去する必要あり。(実際には介護が受けられる施設が併設されていることが多く転居となる)

ケアハウスについて

軽費老人ホームのことですが、ケアハウスという呼称が一般的となりました。

60歳以上から入居でき、自立できる人、自立生活を送るのに不安な人が利用する介護施設です。

大きくは一般型と介護型に分かれます。

①メリット

  • 入居品が必要になるが、月額も含めて総じて費用は安い。
  • 生活設備全般が居室(個室)内に揃っているので、プライバシーのある生活が送れる。

②デメリット

  • 自立あるいはそれに準じる人の利用を前提としている(介護状態になると退去しなければいけない)
  • 介護型は人気が高い反面、待機期間が長い。※介護型の場合は要介護度が上がっても住み続けられることも。

グループホームについて

認知機能の低下に対応した介護施設です

要介護度認定を受け介護度に関係なく、認知機能が低下していると診断された場合に入居資格があります。

小規模な集団生活の中で、機能回復訓練やレクリエーションを通じて認知機能の改善や進行の緩和を目指す施設で、基本的に「できることは自分ですること」がコンセプトとなっています。

食事・入浴・排せつの介助といった基本的な介護サービスを受けることができます。

①メリット

  • 認知機能が低下した人が安心して暮らせる
  • 少人数制なので介護スタッフの目が行き届く
  • 身体機能に衰えのない人が多く、レクリエーションを通じて認知機能低下の改善が目指せる

②デメリット

  • 家族の協力が必要になることも
  • 特別な支援が必要になると退所しなければいけないことも
  • 人気があるが施設の絶対数が少なく、待機期間が長い

老健について

在宅復帰を目指すことが目的なので、機能回復訓練が充実している施設です。

一般的に回復期を経て、在宅介護が難しいと判断された要介護1以上の人が入所します。

①メリット

  • 手厚い介護が受けられる
  • 機能回復訓練が充実している
  • 入居費用は無料、月額費用も安い

②デメリット

  • 入居期間はあらかじめ3ヵ月(原則)と決められている
  • 入所時に退所後の介護方針を決めておく(入所条件)
  • 相部屋が多い
  • レクリエーションやイベントは充実していないことも

月額費用の他にお金がかかるもの

介護施設は月額費用の他に自己負担するものがあります。

月額費用に含まれるものは以下の通りです。

・介護サービス自己負担額

・サービス加算

・居住費

・食費

・日常生活費

以上のものは月額費用に含まれます(※サ高住は食費は別途必要です)

 

気になるのがオムツ代の負担です。

老人ホームに入るともらえなくなる給付

介護保険でもオムツ代が給付対象となるのですが、これは、在宅介護の高齢者が対象です。

要介護度も3以上の高齢者となることが多くなっています。

しかし、オムツ代給付対象者が、病院や介護施設に入院・入所した場合、オムツ代の給付は止められてしまいます。

在宅でもオムツはドラッグストアなどで安く購入できるのですが、介護施設の場合は、廃棄処理料も含めて一日500円かかるところもあるようです。

もちろんこれは、月額費用に上乗せされて請求されます。

そのため、自治体によって、介護施設のオムツ代を助成してくれるところもあります。

自治体によってまちまちなので、月額で5,000円の助成あるいは1万円の助成となるところもあります。

一方で、助成がまったくない自治体もあるので、注意したいところです。

介護施設によっては、オムツ代の方が月額費用よりも高くなるといったところもあるようですから、この点にも注意したほうがいいでしょう。

個人使用のもの

個人使用ではオムツ代が一番お金がかかるところですが、他にも散髪代であるとか個人の嗜好による食べ物などは自己負担となります。

ただし、頻繁に使うかどうかを考えるとオムツ代以上にかかるものはないでしょう。

老後の資金について

介護施設は、高齢者の状態によって対応できるを整えるため、さまざまな種類があることがわかりました。

種類は多く、選択の幅が広がるのは良いことなのですが、入居費用や月額費用に大きな差がでることになります。

月額費用では、介護付き有料老人ホームなどが高額なることが多く、高所得者層向けのものもたくさんあります。

一般的には月額費用は20~30万円程度のものが多いのですが、月額100万円を越すような老人ホームもあるのです。

一部の高所得者層向けですが、そういった老人ホームが、月額費用の平均を押し上げているといった事実もあるので、平均額だけをみて選択肢から外すことだけはおすすめしません。

一般的な老齢厚生年金の月々の受給額は、20万円を少し超える程度なので、この金額内に収まる施設か、預貯金を加えて暮らせる老人ホームを選ばれる方が多いです。

理想の老後を過ごすには、どれだけ現役世代のときに貯金ができるかにかかっているとも言えます。

理想の老後を過ごすための資金の考え方

老後生活には、3,000万円必要と言われていますが、その背景には介護費用や施設への入居費用が必要になってくることがあるからです。

1か月にかかる月額費用が年金で足りない場合、預貯金などでカバーすることに。

仮に、貯金で月々10万円を補填すると考えると、年額で120万円、それが30年続くと3,600万円にもなります。

そうなると、3,000万円でも足りなくなるのです。

無い袖は振れませんから、今あるお金や年金額で収まることが大切で、先ほどもお話ししたように平均と実際の金額には差があります。

全国の老人ホームの月額費用の平均と、都市部の費用、地方の費用では、大きく違うことがよくあり、探せば予算に収まる施設もたくさんあるので、条件を緩和して探してみましょう。

持ち家があり、家族の同意を得ることができれば、家を売却して老後の資金を得るといった方法もありますし、実際に実践している高齢者も少なくないのです。

持ち家を担保にした、リバースモーゲージという年金受給型の借り入れもありますし、現金性の高い預貯金と現金化しにくいけれど資産価値があるものについて、老後の生活資金についてしっかりと考えておきましょう。

まとめ

自治体では、団塊の世代が後期高齢者となる2025年を重視しています

高齢者がピークになることはもちろんですが、それ以上に人口減少による介護スタッフの確保の難しさなどの問題もあります。

限られた予算の中で、高齢者対策に多くの予算を割くわけにはいかず、それでも誰もが先々では高齢者となることで、ここで一つの大きな道筋を立てなくてはいけない時期に来ているのです。

これまでの介護の歴史から見ても、在宅介護では、限界があることは明白で、最後を自宅で過ごせる人はほとんどいません。

国が定めた地域包括ケアシステムにより、住み慣れた土地で老後の生活を送ることが推奨されていて、従来の介護施設とは違った地域密着型サービスなども生まれています。

年金受給が老齢基礎年金だけの人の場合についても、助成などで施設に入居できるところがあるなど、自治体からの支援も含めた老後の生活を考えておく必要があるでしょう。

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