老人ホームでの恋愛、トラブル防止のための家族の対応は?

介護が必要な親が施設へ入居してくれると子供としてもホッと一安心できますが、入居の先に想像もしていなかった「老人ホームでの恋愛」という悩み・トラブルに振り回される可能性もあります。
親が老人ホームで恋愛することに対して、どのように向き合えばいいのか?
今回は、老人ホーム内での利用者同士の恋愛事情やトラブルについて紹介していきましょう。
老人ホーム内での高齢者の恋愛は当たり前?
「老人ホームで高齢者が恋愛感情を抱くことがある。」と聞くと、そんなまさかと思う方は多いです。
多くの方が、年齢を重ねれば恋愛感情が消えてなくなっていくと考えられているわけですが、実際は違います。
高齢者になっても、新しく恋愛感情を抱くことは決して珍しいことではありません。
特に、老人ホームに入居するような年齢になれば、人生のパートナーに先立たれて寂しい思いをしている方も多く、
老人ホームで会話が弾んだり、一緒にいて居心地が良いと感じる相手と出会えば、恋愛感情が生まれてもなんらおかしくありません。
介護の現場では、高齢者の恋愛は良くある話しなのです。
老人ホームの恋愛は、悪いことばかりではない?
ほとんどの子供は、老人ホームに入居した親が新しい恋愛をすることなど微塵も想定していません。
老人ホームで恋愛をするのは、良いことなのか悪いことなのか?
見守るべきことなのか止めるべきことなのか?判断に迷うでしょう。
部分的なところで判断するとよりも、高齢者の老人ホーム恋愛のメリット・デメリットを整理することで、その答えが見つかるかもしれません。
老人ホームでの恋愛のメリット
老人ホームに入居しているということは、足を動かしにくい、食事が一人でとりにくいなど、生活の中でなにかしらの不便を抱えています。
日常生活の中で欠かせない移動、食事、着替え、入浴といった行動を「日常生活動作」と呼びますが、恋愛がきっかけで、以前はできていなかった日常生活動作ができるようになることもあるのです。
やはり、同じ施設内に好きな相手がいれば、「少しでも自分のよい格好を見てもらえるように」と、無意識的に日常生活動作の向上に努めようとするのかもしれません。
老人ホームで生活していながら、入居前よりも体の状態が良くなるというのは、この上ないメリットです。
老人ホーム恋愛のデメリット
一方で、老人ホーム恋愛には次のようなデメリットがあげられます。
- 相手への執着心が強く、ストーカー化してしまう
- 施設内の利用者の数は女性の方が多い傾向にあり、三角関係に発展することも多い
- 恋愛だけでとどまらず、入籍までして遺産トラブルに巻き込まれる可能性がある
- 大きなトラブルがきっかけで、施設を退去させられる可能性がある
いかがでしょうか?メリットとデメリットを比べてみると、デメリットの方が大きいと感じる方がほとんどです。
特に、恋愛の当事者ではなく、親を老人ホームに入居させるために奔走した子供からすれば、「頼むからトラブルなんて起こさないで。」「恋愛トラブルが原因で退去なんて、絶対にやめてほしい。」とため息が漏れてくることでしょう。
だからと言って、「辞めるように言って解決するほど簡単なことではない」のが、老人ホームの恋愛の難しいところです。
老人ホームでの恋愛トラブル事例
平穏に恋愛をしてくれる分には問題ありませんが、厄介なのは恋愛トラブルに発展しまうケースです。老人ホームでの恋愛トラブル事例をいくつか紹介しましょう。
事例1:いつの間にか想いが逆転し、ストーカー化
老人ホームで暮らすAさん(男性)は、後から入居してきたBさん(女性)に好意を抱き、日々の生活の中で少しずつ距離を縮めていきました。
BさんもAさんのアプローチに嫌な様子を見せず、施設の職員も仲良さそうな姿を微笑ましく見守っていたそうです。
しかし、原因こそわかりませんが、ある日を境にAさんがBさんから遠ざかって生活するようになりました。
以前は、二人で隣同士になって食事をしていたのに、Aさんが職員に「Bさんと離してもらえないか…?」と相談するほどに、
気づけば最初に惚れたAさんよりも、好意を寄せられたBさんのほうがAさんに夢中になっていたらしく、Bさんは避けて生活するAさんを必死で追い回すようになってしまいます。
しまいには、Aさんの居室にまで無断で入り込もうとするほどだったそうです。
事例2:遺産トラブルを警戒する相手の家族に罵られ…
Cさん(男性)とDさん(女性)は老人ホームで暮らしながらも、2人のペースで愛を深め合っていました。
頻繁に面会に通っていたDさんの家族は、CさんとDさんがそういった関係になっていることには気づいていましたが、問題もなさそうなので特に口を出すこともありませんでした。
しかし、Cさんの家族は面会に来ることもほとんどなく、久しぶりの面会で親の恋愛事情を把握。
驚いたCさんの家族は、たまたま面会に訪れていたDさんの家族に猛抗議。
後から話を聞けば、Cさんには多くの遺産があり、2人が結婚することで遺産の取り分が減ってしまうことを家族は恐れていたそうです。
CさんとDさんにはもともと結婚する気持ちなどなく、「このまま施設で最後まで暮らせたら…。」と考えていたそうですが、
Dさんの家族はひどく傷つき、そんな姿を見たDさんも「親として申し訳ない。」とふさぎ込みがちになってしまいました。
自分の親が恋愛を!?家族がとるべき対応は?
ほとんどの子供は「デメリットが大きすぎる老人ホーム内での恋愛は避けて欲しい。」と思うでしょう。
しかし、恋愛をする権利は誰にだってありますから、いざ自分の親が老人ホームで恋に落ちてしまってもどうしていいか戸惑うものです。
もしも、自分の親が恋愛に落ちたとき、家族がとるべき対応をまとめておきましょう。
まずは見守ることが大切
たしかに老人ホームでの恋愛はデメリットが大きいですが、その一方で恋愛がきっかけで生活の質があがる可能性もあります。
また、たとえそれが家族だとしても、他人の恋愛に口出しをする権利はないでしょう。
親の話を聞くことなく、反対をすることは、「子どもに理解されない」からと、余計に隠し事にしてしまうかもしれません。
もしも、自分の親が老人ホーム内で恋愛をしていると知ったとしても、頭ごなしに「そんなことやめて!」と押さえつけるのではなく、まずはそっと恋愛の行く末を見守ってみましょう。
小さな気がかりでも、ホームの職員に相談を!
何事もなく二人の時間を過ごしてくれるのならそっと見守るだけでよいですが、場合によっては大きなトラブルに発展する可能性もあります。
大切なのは、トラブルを未然に防ぐことです。
ちょっとした言い争いならまだよいですが、喧嘩や遺産トラブルなどに発展すれば、親にも子供にも相当な負担がのしかかります。
トラブルを未然に防ぐためにも、親を見守る中で少しでもおかしいなと感じることがあれば、ホームの職員に相談しておきましょう。
ハッキリ言ってホームで働く職員にも、高齢者同士の恋愛をやめさせる権利はありません。
しかし、恋愛がきっかけでトラブルが起きるのであれば、トラブル自体を防ぐための対策は講じられます。
実際にトラブルの現場に立ち会うのは、常にそばにいる職員がほとんどですから、いざというときにスムーズに動いてもらえるようにするためにも、日頃からの相談は重要です。
家族同士の顔合わせ
特に大きなトラブルもなく親が相手と恋愛関係を深めていけば、次第に子供や職員にも公認の仲として認識されることも珍しくありません。
そうなってくると、場合によっては入籍にステップアップする可能性も出てきます。
また、順調に進んでいるように見えてもいつトラブルが起こるかわかりませんから、もしものことがあってもスムーズに対応できるように、互いの家族が顔合わせをしておくのも良いでしょう。
どんな子供にとっても自分の親が新たな恋愛をしているというのは複雑なものですから、顔合わせには老人ホームに協力してもらうことをおすすめします。
まとめ
人間いくつになっても恋愛感情が湧いてくるものであり、それを否定する権利は誰にもありません。
しかし、老人ホーム内での恋愛が原因でトラブルが起これば、両者になんらかの危害が及んだり、施設退去といった結果もあり得ます。
もしも、自分の親が老人ホームで他の入居者と恋愛関係になっている、もしくはなりそうな兆候を見せているのであれば、
そっと見守りながらトラブルに発展しそうな小さな変化を見逃さず、こまめにホームの職員に相談するように心がけましょう。