介護保険でできる住宅改修と費用一覧

年を重ねると身体機能に変化が見られます。カーペットの端に躓いたり、トイレでは「よいしょ」と言って立ったりなど、これまでできていた事ができづらくなってきます。

そのような時は住環境を見直してみてはいかがでしょうか?

住まいに手を加え要介護者の心身状態や介助者の状況に合わせることで、安全面の向上と介護負担の軽減に繋がります。

介護保険でできる住宅改修と費用

介護保険では適用となる住宅改修があり、要支援1〜要介護5と認定された方が対象となっています。

介護度に関わらず支給限度基準額は20万円となっていて、自己負担額(所得に応じる)に応じて7〜9割が償還払いされます。

例えば自己負担割合が1割の方が150,000円の住宅改修を行った場合、135,000円が後から戻って来て、その後利用できる残り額は50,000円(償還払い45,000円)となります。

以下、対象となる項目と工事費の目安(10割負担額)を見てみましょう。

①手すりの取り付け(約100,000円〜/階段に3本設置)

手すりとは、移動・昇降や立ち座りの動作がしやいようにするもの。

設置する場所は、門から玄関までのアプローチ・玄関・階段・廊下・トイレ・浴室・居室の出入り口などが挙げられ、縦型・横型・L字型などの形状があります。

②段差の解消(約100,000円〜/洗面所の床の張り替え)

足が上げきらずに躓いてしまうのを回避するために段差の解消を行います。

具体的な内容としては、玄関先の段差の解消として踏み台を設置したり、部屋間の敷居を撤去したりなどが挙げられます。

その他、浴室・廊下・居室の床のかさ上げや玄関前のスロープ設置なども含まれます。

③床または通路面の材料の変更(約50,000円〜/8畳部屋のカーペットへの変更)

床にタイルや石などの滑りやすい材質が使用されている場合は、加工を施したり床自体を替えたりして滑る事を予防し、円滑に移動できるよう整備します。

④扉の取り替え(約120,000円〜/浴室開き戸を折り戸に変更)

ドアの開閉に足の踏ん張りを要する開き戸は、引き戸・折り戸・アコーディオンカーテン等に取り替える事ができ、少ない力で行えるよう戸車の設置も対象となっています。

また、握力低下によりドアノブが握れないなどの理由から、ドアノブをレバー式に変更する事もできます。

⑤便器の取替え(約200,000円〜/洋式便器への変更)

和式の便器だと低い姿勢を要し、またその体勢から立ち上がるには足腰の筋力が必要です。

トイレでの起居動作の軽減を図る目的で洋式便器等への変更ができ、ウォシュレットの設置もできます。

手が不自由で流すのが困難な場合は、下部にトイレを流す用のスイッチやレバーを付け足せますが、トイレ自体を新設する事はできません。

⑥上記①~⑤の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修

手すり取付けのための壁下の下地工事・浴室の床の段差解消(浴室の床のかさ上げ)のための給排水設備工事・床材の 変更のための床の下地工事・扉の取替えのための壁や柱の改修工事・便器の取替えのための給排水設備工事(水洗化を除く。)・便器の取替えのための床材の変更などは、付帯する工事内容として介護保険の対象となります。

■介護保険の住宅改修はどこに頼めば良いか?

いざ、介護保険を利用して住宅改修を行うには、どこに相談すれば良いでしょうか。既に介護保険サービスを利用している方は、担当のケアマネジャーに相談しましょう。

まだ介護保険サービスを利用していない方は、地域包括支援センターや住宅改修を行っている介護保険事業所に相談に行くと良いでしょう。

自宅を建てた工務店などが住宅改修を行った際も、該当する工事であれば介護保険の対象となります。

しかし、一般の工務店だと介護保険が適用となる住宅改修の申請に不慣れであったり、高齢者に合った材料を手配できるかなど、不安要素があります。

例えば、介護保険の住宅改修の申請には工事前に事前に市町村に申請する必要があり、それを知らずに事後報告で介護保険が下りなかった例もあります。

馴染みの工務店に依頼する場合は前もってケアマネジャーに相談し、確実に介護保険が適用となるよう配慮してもらうようにしましょう。

因みに、介護保険の住宅改修の申請に伴う「理由書」は、ケアマネジャー・地域包括支援センターの職員・理学療法士・作業療法士・福祉住環境コーディネーター2級以上の専門職が作成できる事となっています。

■介護保険の住宅改修の注意点

介護保険を利用し住宅改修を行うには、いくつか注意しなければいけない事があります。以下、注意点を見てみましょう。

①自宅でなければいけない

介護保険が適用となる住宅改修を行う住宅は、自宅でなければいけません。

自宅とは、住民票が示す住所です。住民票に記載のある住所ではなく、息子や娘宅に住んでいる場合は、適用外となります。

その場合は、福祉用具のレンタルは対象となるので、レンタル品で代替可能か検討します。

②新築・老朽化は対象外
上記でも述べたように、住宅改修を行う住宅は住民票がある住所に住んでいる事が前提となります。

よって、建築中の建物にはまだ住んでいないという事になり、介護保険の対象外となります。

つまり、新築の住宅を住宅改修するには、竣工日以降に申請する事になります。

また、単に使用を重ねた事で劣化した箇所を新しい物に替えるのは介護保険の対象外となっているので、申請書の作成には注意が必要です。

③完工までに時間がかかる

介護保険を利用して住宅改修を行うには事前に市町村に申請する必要があります。

通常、申請してから1~2週間ほどで許可が下り、その後着工となるため、すぐに必要な方には不向きであると言えます。

④介護保険の住宅改修が複数回行える

介護保険の住宅改修は、原則1度しか利用できませんが、条件を満たせば複数回行う事ができます。

引越しで住所地が変わり、住む住宅が変わった場合は、その都度20万円まで利用できます。

また、初めて住宅改修を行った時期から介護度が3段階以上上がる事でもリセットされます。

ここで意味する「3段階」とは単なる「介護度」ではなく、要支援2と要介護1は同じ段階と見なされるので注意しましょう。(例:要支援2→要介護4=3段階)

■まとめ

一般的に介護保険サービスというと、ヘルパーやデイサービスなどを想像する方が多いかと思いますが、このように住宅改修も介護保険の対象となっています。

また、市町村によって申請様式や法解釈にも相違があります。

まずは介護について困っている事をケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、介護保険サービスや地域資源についての情報を提供してもらい、適切な対処を考えてもらいましょう。

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