老人ホームのレクリエーションの種類と効果

老人ホームは暗いイメージがある。そういった人も少なくないかもしれません。
しかし、実際に見学してみると毎日のようにイベントがあり、入居者の笑い声が絶えません。
そこには施設のスタッフの努力があり、盛り上がるレクリエーションの時間があるのです。
ここでは、単なるお楽しみにとどまらない、老人ホームのすごいレクリエーションについて詳しく紹介します。
老人ホームのレクリエーションとは?
老人ホームや通所するデイケアサービスでは、高齢者が一堂に介して行うレクリエーションが定着しています。
老人ホームやデイケアサービスによって、ほぼ全員参加となっているもの、自由に参加できるものなど種類もさまざまです。
また、高齢者が興味を持てるレクリエーションが良いので、同じ時間でも複数のレクリエーションが行われて選ぶことができたりもします。
男性と女性では、興味を持つものが偏っていたり、一人ひとりの好みに合わせることで、積極的に参加してもらえるメリットもあり、施設での時間を楽しく過ごす最大の要素と言ってもいいでしょう。
レクリエーションの豊富さは、その老人ホームの特色となっていて、その多彩さが老人ホームの人気を左右する場合もあるのです。
老人ホームで行われるレクリエーションの目的とは?
レクリエーションは、多くの老人ホームで取り入れられています。
レクリエーションのない老人ホームを探すほうが難しいかもしれません。
老人ホームがレクリエーションを取り入れているのは、高齢者に楽しんでもらうだけではなく、次のような目的があるからです。
・老人ホーム内のコミュニケーションを図る
高齢になるにつれ、身体機能が衰えていき、自然と外出する機会が減っていきます。
その結果として、一人暮らしの高齢者などはその状態が長く続くことで、精神的にうつになったり引きこもりになったりといった状態になってしまうのです。
認知機能が低下する原因として、他の人とのコミュニケーション不足なども挙げられているのです。
老人ホームで取り入れているレクリエーションでは、スタッフや他の入所者との交流やつながりの楽しさを知ってもらうこと、体を動かすことの楽しさを感じてもらうことです。
コミュニケーションを数多くこなすことで、脳の活性化も期待できるのも大きなメリットといえます。
・脳機能や身体機能の活性化
クイズなどを利用した遊び、言葉を使った遊び、さらには折り紙など指先を使った遊びをすることで、高齢者の脳を活性化させることがわかっています。
そのため、頭の体操的なことや、指先などを使ったレクリエーションによって、認知機能衰えの予防やその進行を食い止めることにつながっています。
このような脳機能だけではなく、レクリエーションには体の機能を維持する効果も期待できます。
高齢になると、身体機能の衰えが進行するのは仕方のないことですが、体を動かさないでいるとその進行度が早まってしまいます。
そのため、適度に運動することがとても大切で、それにもレクリエーションが一役買ってくれるのです。
老人ホームで取り入れているレクリエーションでの運動は、高齢者にも無理なくできるものであり、動かせる部分を使うことで、身体的な老化の進行を防止する目的もらうのです。
・QOLとADLの向上
レクリエーションによって脳機能や身体機能が活性化することで、日々の生活の質も向上していきます。
QOLは「Quality of Life」の略で「生活の質」の意味です。
このQOLは、人間らしい生活を営むこと、さらには生きる喜びや糧を見い出すことです。
「毎日楽しく過ごせることができることの指標」と考えていいでしょう。
いっぽうのADLですが、これは「Activities of Daily Living」の略で、「日常生活の動作」の意味です。
身体機能の向上を目指すレクリエーションは、このADLを高めるのもが目的です。
老人ホームでの、高齢者への接し方は、このQOLとADLを高めることを主眼に置いていて、そのための一つの手法としてレクリエーションが大きな効果を発揮しているのです。
●老人ホーム内のレクリエーションの種類は?
レクリエーションの種類はさまざまですが、大きく大別すると以下に分類できます。
・頭を使う
・体を動かす
・リラックスする
以上の三つですが、体を動かしながら頭を使うものや、同時にリラックスした気分になれるものもあります。
レクリエーションをすることによって、気持ちが穏やかになるのであれば、生活も豊かに過ごすことができるでしょう。
「頭を使う」ことは場所を取らず、さらに一人できるものが多く、いつでも簡単に取り入れることができるのがメリットです。
一人でできるレクリエーションの場合は、自分でやる気を起こさないとできないのが難点ですので、周囲が盛り上げていくような配慮が必要になるでしょう。
脳を活性化するにはとても効果的ですが、あまりに難しいと解けなくて、それがストレスになる場合もあります。
高齢者一人ひとりの能力は違いますので、横一線で同じことをしてみる、というのが難しい場合があるので、その点には注意が必要です。
体を動かすレクリエーションは、体の機能を改善するのにも良いとされていて、
これも、高齢者の身体機能によってはできるできないがあるので、その点の配慮も忘れないようにします。
体を動かすことは、体の機能を高めるだけではなく、脳を活性化させる効果も期待できます。
体と心はつながっていて、体を動かすだけで脳へ良い働きをすることも。
歳を重ねるごとにできることが限られてくる不安感というものは、高齢者なら誰でも持っています。
それが高じて、情緒が不安定になり、夜眠れない、ちょっとしたことで落ち込んでしまう(くよくよしてしまう)などといった不調が出てくるのです。
このように、身体機能や脳機能の老化防止、老人ホームなど介護の現場での時間を楽しく過ごしてもらうためにも、レクリエーションは、ほとんどの老人ホームや施設で積極的に取り入れられています。
●盛り上がるレクリエーションの例
「頭を使う」「体を動かす」「リラックスする」の三つに分けてそれぞれ代表的なレクリエーションをいくつか紹介します。
・頭を使う
①折り紙
折り紙といっても、簡単なものから手の込んだものまでさまざまです。
いくつかの例を示して、同じように折ってもらうようにします。
手先の器用さが求められるのですが、誰でも丁寧に行えば綺麗に折ることができるのが折り紙の良いとことです。
折り方ひとつにしても、その人の性格が分かることも多く、老人ホームでのレクリエーションの定番と言えるものです。
②塗り絵
塗り絵は単に色を塗るだけと思いがちですが、形を認識し、配色を考える、さらにはみ出さないように丁寧に塗るなど、さまざまな要素が求められるので、見た目以上に高度なことをしています。
これも頭を使うレクリエーションとして多く取り入れられています。
絵を描くのは難しくても、最初からできている絵に色を塗っていくのは、誰でも無理なくできますし、できあがった後の品評会などで、楽しく盛り上がることができるでしょう。
③しりとり
シンプルですが、多くの人が参加することで盛り上がるレクリエーションです。
分からないと出てこないので、みんなで考えるなど配慮しながら盛り上げていくことが大切です。
3文字から5文字の間で考える、地名限定、食べ物限定など幅を狭めることで意識して考えるようになるので、頭の体操にもなります。
④かるた
これもシンプルであり、誰でも一度はしたことのあるゲームです。
「読み上げる」「耳で聞く」「頭で覚える」「目で探す」「カードを判断する」「カードを取る」といった一連の動作ができる点が、シンプルでありながら、かるたの奥深さを再認識することができます。
⑤トランプ
カルタと違って遊びのレパートリーが広いです。
神経衰弱などは誰でも知っているゲームですから、取り入れやすいでしょう。
ルールが簡単で、なおかつ記憶力が必要なので、トランプの中でも一番レクリエーションとして取り入れられる回数が多いのが神経衰弱といっていいでしょう。
・体を動かす
①じゃんけん
「頭を使う」に入れてもいいのですが、体を動かす、指を動かすといった点で特に上半身の運動になります。
さらに、勝った負けたでさらに動作を加えることで、じゃんけんのレパートリーが広がります。
例えば、勝ったら「万歳」をするのもいいでしょう。
負けたら「泣き真似」をするといった動作を加えることで、じゃんけんがよりアクティブになるのです。
②旗揚げ体操
これも定番です。赤い旗と白い旗を用意しましょう。
「赤揚げて、白揚げないで、赤下げない」といったように言葉遊びをしながら、旗揚げを行います。
単純ですが、毎回大盛り上がり間違いなしの定番レクリエーションでs。
③ジェスチャーゲーム
出されたお題を、言葉に出さず、体を動かすことで表現して次の人に伝えるゲームです。
グループに分かれて対抗戦形式にするのも楽しいでしょう。
これもかなり盛り上がりますし、お題によっては体全身を使うことになるので、体を動かすレクリエーションとしてはもっとも適しているといっていいでしょう。
④風船遊び
かなりバリエーションがあります。輪になって上に打ち合って何回続くかなどを競ってもいいでしょう。
ボールになるとかなりハードワークになるので、風船が一番手頃です。
対戦型になると熱くなりがちなので、スタッフなどが適度にクールダウンしながら遊ぶようにしましょう。
⑤ラジオ体操
ゲームではないですが、何かの折にラジオ体操は有効です。
老人ホームでも朝夕に取り入れているところが多く、これも定番のレクリエーションといっていいでしょう。
・リラックスする
①深呼吸する
レクリエーションの合間に行ってもいいですし、何かの折に深呼吸する習慣づけるのもいいでしょう。
歳を重ねるとどうしても姿勢が前かがみになりがちで、呼吸が浅くなります。
深呼吸をすることで姿勢の改善にもつながりますし、できるだけゆっくり吸ってゆっくり吐くといった動作を繰り返すようにしましょう。
②音楽を流す
老人ホームでは、音楽が流れていることが多いです。
知らず知らずのうちに耳に入り、それがリラックス効果を生んでいると考えていいでしょう。
音楽が人の心を癒やすことは、音楽療法としても知られています。
高齢者にとっては耳障りの良い音楽は安らぎを与えてくれるのです。
③散歩
「体を動かす」にも入るのですが、歩くということは生活の基本です。
歩行が困難な高齢者でも車いすを利用するなどして、外を散歩するのは、リラックス効果が大いに期待できます。
老人ホーム内でストレスを感じる高齢者も少なくありません。
そのためにもストレスを発散すること、気持ちを平穏に保つためにも外に繰り出して散歩をするように心掛けたいものです。
④動物とふれあう
老人ホーム内で動物とふれあうことは、難しいかもしれません。
それでも、老人ホームで動物を飼っているところもあるようですから、動物とふれあうこと、触れ合いなくても見るだけでも良い影響があることが分かっています。
動物の無垢な動作が精神的な安らぎを与えてくれるのです。
⑤昼寝
過度な昼寝は、夜眠れないなどの悪循環になりがちですが、適度に運動をして短時間の昼寝をすることは、大きなリラックス効果があります。
30分でも1時間でも昼寝時間を設けている老人ホームもあるようですから、一定の効果があることは間違いありません。
●レクリエーションによって変わったこと
レクリエーション効果は認められていても、高齢者の中にはレクリエーションに参加することが苦手、中には毛嫌いする人もいるようです。
こういった人はレクリエーションが子どもの遊技に見えてしまって、「子供だまし」のように映ってしまうのです。
確かに、誰でも参加できるようにシンプルなレクリエーションが多く、体が満足に動く高齢者なら特に、幼稚に見えてしまうのかもしれません。
老人ホーム内のレクリエーションで母が変わった体験談
「うちの母は、要介護度認定も軽く、日常的なことは何でもできるほうなので、老人ホームに入所することが決まっても、「自由に生活してもいいのよね」ということで、レクリエーションには参加せずに好きな読書をしたりテレビを見たりして過ごしていたようです。
それでも、社交的な性格ですから、スタッフさんが常に誘ってくれていました。
自分でも寂しさを感じていたのでしょう。レクリエーションに参加するようになったのです。
単純な遊びは手持ちぶさたみたいな感じだったのですが、カラオケや習字などは楽しいようで、そういったものから参加を始めて、
最近では最初の頃はバカにしていたような、じゃんけん遊びなども率先して参加するようになりました。
レクリエーションを通して、他の入所者とのコミュニケーションが図れるのが心地良かったのだと思います。
老人ホームの生活にも慣れて、笑顔も増え、施設でのできごとをたくさん話してくれるようになりました。
自宅にいるころよりも、表情も明るくなって、入所して本当に良かったと思っています。」
~~母を老人ホームに入れた体験談より~
老人ホームではさまざまなレクリエーションを用意しています。
高齢者にも得手不得手や好みなどがありますから、自分でできそうなもの、興味のあるものから始めてみるといいでしょう。
そこからコミュニケーションの輪が広がって、誘われるような形で他のレクリエーションにも参加するようになるのです。
●まとめ
やってみないとわからない、といったように最初は子どもだましだと馬鹿にしていたレクリエーションも、参加してみると楽しかったというケースは多いです。
認知機能低下の予防や老化の進行を遅らせるため、という目的もありますが、何より施設での時間を楽しく過ごせることが第一!
そのためには、最初のきっかけが大切です。
老人ホームのスタッフが、毎回しつこいくらいに参加を促すのはそのためです。
レクリエーションを通じて、入所者やスタッフとコミュニケーションを取ることは、認知機能の低下を防止する大きな効果を発揮してくれるのは間違いありません。
一緒に楽しい時間を過ごすことで、スタッフや他の利用者さんと良い人間関係も築けますし、いい人間関係の築けるところは、いい施設と言えるでしょう。