親の介護のお金がない!介護の費用や対策について

突然やってくる介護の問題、それに大きく関わってくる費用の問題について、どのような対処法があるのか?
そしてお金が無い場合はどうしたらいいのかを説明します。

介護費用がない!親の介護は義務なのか?

親の介護は突然やってきます。人によってはある程度覚悟していた人もいるかもしれません。

しかし、漠然とはわかっていても、介護が必要なそのときになって考えるという人が大半でしょう。

前もってある程度の計画を立てていればいいのですが、何も準備をしていないと、いざそのときがやってきたら、まさに晴天の霹靂(へきれき)状態となってしまうのです。

いずれにしても、親の介護を最優先に考えなければいけません。

そうなると、問題になるのがお金です。先立つものがなければ始まりません。

しかし、お金がまったくないという状況ではどうしたらいいのでしょうか。まずは、親の介護を子どもが必ずしなくてはいけないのかを考えます。

・親の義務と子どもの義務

子どもを成人までしっかりと育てるのが親の義務です。

いっぽうで高齢となった親を介護する義務が子どもにはあるのでしょうか。

・民法での解釈は?

民法での解釈は以下の通りです。
①民法877条:「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」
②民法752条:「夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならない」
このことから、親子・祖父母と孫・兄弟姉妹・夫婦のいずれかの関係にある場合、独力で生活できない場合は扶養する義務があると法律で定められているのです。

・扶養範囲はどうなっている?

まずは、扶養対象が配偶者や未成年の子どもである場合は、こちらが最優先で扶養しなければいけません。

それ以外の関係、この場合は、離れて生活している親の介護についてということになりますが、まずは自分の生活を確立することが最優先であり、その上で経済的に可能な範囲内において、介護義務を果たせば良いというのが一般的な考えとなります。

このことから子どもに経済的な余裕がなければ、親の介護を強制することはできません。

・長男が親の面倒を見る?

兄弟姉妹がいても、「親の世話は長男が見るものだろう」と、無意識に思っている人は多いのです。

しかし、それを定めた法律はありません。親の扶養義務は長男・次男関係なく平等なのです。

そのため、誰が親の介護をするかは話し合いで決める問題となるのです。

もしも、まとまらない場合は家庭裁判所で調停をすることになりますし、家裁でも長男という理由だけで介護を押しつけることはありません。

・刑法ではどうなってる?逮捕される場合もある?

親の介護は経済的余裕のある範囲で行えば良いというのが法律の解釈となっています。

それでは、これを素直に解釈すると、経済的余裕が無い、つまりお金が無い場合は、生活能力のない親の介護を放置してもいいのか、ということになります。

法律ではそれでも仕方がない…ということにはなりません。

・保護責任者遺棄罪

刑法218条に保護責任者遺棄罪というものがあります。これには親が独力で生きていけない、つまりは生活能力がなく介護の必要があるのに、その保護を怠ると、懲役3ヵ月以上5年以下といった刑事罰に問われることになります。

・それでもお金がないときは?

お金がなくては介護ができない…それは当然のことです。

お金がなくてもあらゆる手を尽くさなければいけません。まずは、介護サービスを受けることです。

親の要介護度にもよりますが、1割の負担で介護サービスを受けることができるので、それほど大きな出費にはなりません。親の年金で十分にまかなえるでしょう。

年金が老齢基礎年金だけの場合、子どもも援助ができない場合は、生活保護を受けることもできます。

お金が無いからあきらめるということではなく、さまざまな方法が用意されているので、その方法をおおいに活用することが大切です。

●親の介護費用はなにがかかる?

親の介護が必要になるケースはさまざまです。急に倒れた場合は、そのまま入院となりますし、回復してもそこから特養に移る場合もあります。

徐々に認知機能低下が進んだ場合は、在宅介護がメインとなるでしょう。

ここでは、在宅介護について、かかる費用を説明します。

・月平均は5万円

公益財団法人の家計経済研究所が2016年に行った家計調査では、1ヵ月あたりの在宅介護にかかる費用は平均で5万円ということです。

これには、介護サービスの自己負担額も含まれています。

介護サービスについては要介護度によって、自己負担額が変わってくるので、要介護度ごとの一月にかかる介護費用を算出したほうがいいでしょう。

全体 介護サービス料 介護サービス以外の費用
・要介護1 33,000円   7,000円   26,000円
・要介護2 44,000円  14,000円   30,000円
・要介護3 60,000円  25,000円   35,000円
・要介護4 59,000円  17,000円   42,000円
・要介護5 74,000円  21,000円   53,000円
平均   50,000円  16,000円   34,000円

以上のような結果となります。

介護サービス料は自己負担額です。介護サービスには、入浴介助・排せつ・食事、デイケアサービスなど、介護保険適用内でのさまざまなサービスとなります。

直接的に利用するサービス以外にも、介護には必要にものがあります。

オムツ代などの消耗品や、介護用の食事スプーンなどの介護用品で、介護費用の3割ほどかかります。

その他にかかる費用は、社会保障・社会保険、その他となっています。

※実際に在宅介護ができる要介護度は2から3がボーダーラインとなるでしょう。

在宅介護に潤沢にお金をかけることができて、自宅も介護用にリフォームできるような経済力があれば、要介護度3以上になっても在宅介護もできるのですが、親子とも経済力がなければ難しく、そうなると特養などに入所するほうがはるかに金銭面で楽になります。

また、在宅介護をする場合は、初期費用(一時費用)として、平均83.3万円かかっています。

この費用の内訳は、主に介護用のリフォームです。転倒防止のための手すりを付けること、介護ベッドや車いすなどの購入費用です。

また、玄関周りをバリアフリー化する必要もあるでしょう。

介護ベッドや車いすなどはレンタルも可能です。購入の場合は、介護保険から一定額の給付を受けることができるようになっています。

それでも、介護を始める場合は80万円を超える費用がかかるということに注意が必要です。

もっとも、これだけ必ずかかる(かける)というわけではありません。必要最低限に抑えることもできるでしょう。

・介護施設に入所する場合

在宅介護のほうが介護費用は安上がりになる…それはお金のかけかたにもよるでしょう。

しかし、要介護度が上がるとお金云々の問題では済まされなくなるのです。

というのも、寝たきりになると介護サービスだけでは追いつかない状況になりますし、介護をする家族も疲弊してしまいます。

お金がないから介護施設に入所できないという先入観がありますが、反対に在宅介護に限界を感じて、介護施設に入所するという選択肢もあるのです。

民間の有料老人ホームでも探せば月額費用が少なくて済むところもあるかもしれません。

しかし、一般的に一番安い月額費用で利用できる介護施設は特別養護老人ホームでしょう。

それでも一般的なユニット型(個室)特養では、月額費用は、135,000円程度かかってしまいます。月額費用の内訳の費目は、以下の通りでそれぞれにかかる費用も明記します。
・施設介護サービス費 23,280円
・介護サービス加算   1,567円
・居住費       59,100円
・食費        41,400円
・日常生活費     10,000円

一般的な内訳とそれにかかる平均的な費用です。

食費や居住費などはかなり増減ができますし、地方によってはかなり安くなるところもあります。

そうなると月額費用が10万円を切るような特養もあるでしょう。

先述した在宅介護の月額費用は、介護に関わる費用です。そこには食費や住居費などは含まれていません。

特養では、10万円程度で全てを賄うことができるということも覚えておいたほうがいいでしょう。

特養の一般的な月額費用は135,000円と先述していますが、在宅介護の場合は、介護費用の平均が5万円です。

これに住居費用と食費、光熱費などが加わり、平均では12万円程度となります。

しかし、これにはかなり幅があります。平均値だけを取ってみると、在宅介護のほうが、特養入所よりもかかるお金が安くなると考えていいでしょう。

●介護費用はまずは親のお金から使うこと

介護となると、すべてを子どもが介護費用を賄わなければいけないというわけではありません。

というよりも、親にも年金受給という収入があるのですから、まずはそこから介護費用を捻出するようにします。

老齢厚生年金であれば、老齢基礎年金と合わせて20万円前後の年金受給があります。

そうなると、その年金額だけで、介護費用や食費などの月々の生活費を賄うことができますし、足りなければ介護が必要になるまで、いわゆる現役世代の時に貯蓄した貯金を切り崩していくことになります。

もっとも、これは一般的な例であり、すべての人がそういうわけではありません。収入が老齢基礎年金だけでしたら、月々5万円程度の年金受給となり、その金額でしたら、なんとか介護費用が賄えるくらいの金額にしかなりません。親に切り崩す貯金がなければ、それ以上かかる費用は子どもが賄うしかないのです。

●介護や費用など相談はどこにすればいい?

かかる費用が安く済むのであれば、住み慣れた在宅介護が一番と考えるかもしれません。

しかし、365日24時間の介護は、介護サービスを利用するにしても身体的にも精神的にも厳しいものがあるのも事実です。

また、費用面で介護施設への入所ができないと考えている家族も少なくありません。そのようなときはどこに相談したら良いのでしょうか。

・市区町村の介護保険担当窓口

「介護保険課」あるいは「高齢福祉課」など名前はさまざまです。まずは電話などで連絡して訪ねるようにします。一般的に相談についてはいつでも門戸を開いてくれているので、介護について、あるいは介護費用について相談するといいでしょう。介護全般に関しての窓口は、市区町村の介護保険担当窓口ですから、まずはここに相談するのが一番です。

・地域包括支援センター

市区町村に必ず一つは設置されている公的機関です。高齢者が可能なかぎり、住み慣れた地域で生活できるように支援するところです。

・社会福祉協議会・社会福祉士会

地域包括支援センターと同様に高齢者介護の相談を受け付けてくれます。

※このほかにも社会福祉法人、NPO法人、ボランティア団体、介護関連の事業を営んでいる一般企業などであれば、介護の相談窓口を設けたり、人員を配置していることがあります。

また、介護サービスを受けているのでしたら、担当のケアマネージャーがもっとも身近な相談相手となってくれることでしょう。

また、ケアマネージャーと相談することで、より適切な介護サービスの利用計画を立ててくれるでしょう。

お金が厳しいことを告げると、最低限必要な介護サービスに切り替えることもできます。

●生活保護で介護費用を賄う

生活保護を受けながら老人ホームに入所する子とは可能です。

介護サービス費用は、市区町村から直接老人ホームに支給されます。

そのため、介護サービス費用は本人が直接負担することはありません。そのため、先述した特養の費用を例に取ります。

・施設介護サービス費 23,280円
・介護サービス加算   1,567円
・居住費       59,100円
・食費        41,400円
・日常生活費     10,000円

以上のうち、介護サービス費、加算費の負担がなくなります。

そうなると、残りの費目である居住費と食費、日常生活費を自らの年金と支給される生活保護費から負担することになります。

居住費は一般の家賃に相当するもので、生活保護法で定められた、住宅扶余費として定められた上限額内で実費が支給されます。

生活費も同様に生活扶余費として必要な額が支給されることになっています。

これによって、年金収入と合わせてやりくりできる老人ホームを決めることになります。

入居一時金がかからず、月額費用が安くなる特養が一般的と考えていいでしょう。

もっとも、特養の入所条件は、原則として要介護度3以上となっている点に注意が必要です。

●まとめ

お金がないから在宅介護を続ける…とする考え方は少なくありません。

しかし、介護する側にとっていくらお金がないからといって介護を24時間365日続けるのは無理があります。

介護される側にとっても精神的な負担が大きくなるでしょう。

兄弟など身内が多ければ、相談して介護費用を出し合って施設に入所するという方法もとれますし、生活保護を受けて老人ホームに入る方法もあります。

家族は介護のプロではありません。介護を続けていくことでそれなりのスキルが身につくかもしれませんが、できることにも限界があります。

介護離職なども社会問題化していますし、介護については自分だけで背負うのではなく、介護サービスの他にも生活保護など積極的に外的支援を活用するようにしたほうがいいでしょう。

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