老人ホームから帰りたがる?帰りたいと言われた時の対処法

高齢者にとっては、老人ホームが終の住処になることがよくあります。

しかし、安心できる場所であるはずの老人ホームが、居心地が悪く感じる人もいます。

中には、ホームシックにかかって、住み慣れた自宅に帰りたがる高齢者も少なくありません。

そういったときに、家族はどのように対処したらいいのでしょうか。

本人の意思を尊重したいけれど、自宅で暮らすのは難しい場合、家族は心苦しい思いをすることでしょう。

そんなとき、家族はどう対処したらいいのか?具体的な対応を紹介します。

●老人ホームから帰りたいという高齢者は多い?

本人は老人ホームに入りたくないと思っていても、自宅で暮らすのはどうしても難しいので、本人の意思に反して老人ホームに入居させることはよくある話です。

しかし、「本人の意思が尊重されるべき」という風潮が強いので、一見するとひどいことをしているように見えますが、違う面から見れば、それがベストな選択だとも言えます。

本人が望んでいないのに老人ホームに入居させてしまうと、自宅に帰りたいという可能性は高いでしょう。

家族としては心苦しいし、自宅に帰れるのであればそうしたいところです。

しかし、それはあくまでも「本人からの視点」という面で見ているからです。

「家族の負担」という視点から見れば、「高齢者が望むなら、自宅に住むのが一番」とも限りません。

自宅で介護をするには、利用できる訪問介護にも限界があるので、少なくとも家族が介護や支援をしなければ、介護が必要な高齢者は自宅で暮らすことができないからです。

特に、徘徊行動などがあると、24時間見守りが必要になるでしょうし、家族への負担は想像以上のもの、

介護は家族だけが抱える問題ではないので、施設などを取り入れながら無理のない介護を続けるのが、いい介護につながる秘訣です。

高齢者の介護の問題は、高齢者の数だけさまざまな問題があり、一言で片付けられる問題ではありません。

老人ホームに入居する経緯も、理由もさまざまなので、本人が望んで入居するケースもあります。

その理由が、家族に迷惑をかけないようにするためだったり、自宅で暮らす限界を感じたりといったことが多いのですが、

本人が納得したとしても、高齢者の気持ちの持ちようで「自宅に帰りたい」となることもあるのです。

・帰宅願望の強さから徘徊癖が出ることも

老人ホームに入所して、帰宅願望をあからさまにアピールする人もいれば、内面に押し殺している人もいます。

入所を受け入れていても、内心はどこか寂しげにしている人も少なくありません。

気持ちはまさに三者三様なのですが、正直な気持ちが夜な夜な徘徊癖となって現れるケースもあります。

徘徊癖は、本来の願望を表現しているとされていて、徘徊がそのまま自宅の方向を無意識のうちに向いていることが数多くあるのです。

根底にあるのは、住み慣れた我が家に帰りたいという願望の強さなのですが、もう一つ忘れてはならないのは寂しさや孤独感でしょう。

夫婦二人で老人ホームに入所した場合は、そういった徘徊癖は極端に少ないようです。

認知機能の低下が進んでしまえば、自分自身がわからなくなってしまい、幼児帰り(赤ちゃん帰り)となってしまって多動性による徘徊癖が多く起こるようです。

認知機能の低下がそれほど進んでいない場合の徘徊癖は、「帰宅願望の現われ」さらには「寂しさの現れ」といっていいでしょう。

老人ホームから帰りたがる場合の対策は?

老人ホームに入所してから、高齢者の帰宅願望の強さに気がついた場合は、どのように対処したら良いのでしょうか。

老人ホームの入所の理由が、より良い介護を受けるため、さらには家族の介護負担を軽くするためなど、さまざまな要因が合わさっています。

それら一つ一つで検証しても、他の事柄が結局邪魔をしてしまうことがよくあるのです。

ですから、結局のところは一面だけを見て考えるのではなく、全体を見て判断をしなくてはいけません。

・なぜ老人ホームから帰りたがるのか?

まずは帰りたい理由を考えます。一つ一つ考えることで、適切な対処ができることもあります。

①認知機能の低下によるもの

認知機能の低下が進行することで、帰宅願望が強くなることがあります。

その言動では、自分がいまどこにいるのかがわからない、どうしてここにいるのかを考えてしまう。

それが本人にとって大きな不安やストレスになってしまうのです。

家族といても家族と認識できず、知らない人に取り囲まれている気持ちになることもあるようです。

そして、安心できる場所や人に行きたいので、帰宅願望が強くなるというわけです。

②環境が変わることでおきるストレス

自宅と老人ホームでは、明らかに環境が変わります。

高齢者は、新しい刺激や変化よりも、今までと同じことをする傾向が強いでしょう。

そのため、高齢者にとって生活環境が変わることは、大きなストレスにもつながります。

慣れない場所にいることで、また、デイサービスなどいつもとは違った介護サービスを受けるなど、環境が激変したと思い込み、落ち着かずに家に帰りたいという気持ちが募ることになるのです。

高齢者によってはちょっとした環境の変化でも、それが耐えがたいことに感じてしまうことがあります。

それが、自宅から老人ホームに変わったことで、当然「いつもの場所」ではありませんから、居心地の悪さから家に帰りたいと訴えるようになるのです。

③コミュニケーションが苦手な場合も

老人ホームでは高齢者同士のコミュニケーションを奨励し、さまざまなレクリエーションが企画されています。人それぞれですから、参加するしないは自由に決めることができるのですが、意思表示に乏しく、嫌々行っているとそれがストレスになり、孤独感となって帰宅願望が増してしまうのです。

④素直な欲求の現われ

幼児帰りに近いのですが、高齢者は自分の気持ちをストレートに出すことが多々あります。

「お腹がすいたからご飯を食べたい」のと同じように「寂しいから家に帰りたい」ということになるのです。

素直な正直な欲求から帰宅願望が現れるということです。

⑤夜になると帰宅願望が強まる

徘徊癖とは違うのですが、夕方は誰もが、そわそわして落ち着きがなくなる時間帯です。

それを現役世代は気持ちで抑えることができるのですが、高齢者になるとその気持ちが高じて、イライラしたりすることが多くなるのです。

また、認知機能が低下した人は、一時的に進行したような様子を見せる場合があります。

夕方は特に老人ホーム内でも人の動きが激しくなるので、落ち着かず高齢者自身も情緒不安定になってしまうのです。

・帰りたいという帰宅願望を抑えるためには

帰りたい…高齢者は気持ちをストレートに出すことが多い傾向にあります。

そのときはどのように対処するべきなのでしょうか。

①気持ちを受け止める

高齢者の言い分をしっかりと聞いて、気持ちを受け止めるようにしましょう。

大切なのは頭から否定しないことです。

「もう帰る家はない」「ここが家だから」といいった言葉は不安を煽るだけなので禁物です。気持ちをはっきりと出すことで高齢者も落ち着くことがあります。

帰ってもしょうがないという気持ちだと寂しいのですが、気持ちを逸らす、もっと楽しいことを考えるように仕向けるなど、意識を他に向けるようにしましょう。

②不安を取り除く

これはなかなか難しいのですが、帰りたい理由をしっかり聞くことが大切です。

帰りたい理由は単にホームシックだけではないかもしれないからです。

場合によっては、他の入所者と合わないと、名前を出してくることもあるでしょう。

それはそれで対策がしやすいので、できるだけ顔を合わせないようにするなどの処置ができます。

他にも帰りたい理由を聞いて、一つ一つ対処ができるようにしましょう。

認知機能低下が進んで「家の戸締まりをしなくては」「昔の写真が見たい」「そろそろ庭の手入れをしなくては」といったことも、一つ一つを丁寧に説明することで心を落ち着かせることができるのです。

③嘘は言わない

落ち着かせようと、その場しのぎの嘘を言ってしまうことがあります。

嘘も方便といいますが、ありきたりの嘘は高齢者も見抜いてしまうことが多いのです。

その場で納得できずに不安な気持ちが増幅してしまうだけなので、逆効果になりかねません。ダメなものはダメとしっかりと話すことも大切です。

●認知機能が低下していて、言うことを聞かない場合は?

何か他に興味を向けるようにできれば、もっとも正しい解決法といえます。

高齢者の気持ちはそれほど複雑なものではなく、どちらかというと単純明快です。

そのため、他の人と楽しめるレクリエーションなどに積極的に参加してもらう、これまでの趣味を活かしてもらうなど、興味をそそるようなことに目を向けてもらうようにしましょう。

自分で解決できないときは、一人で抱えることはなく、生活指導員などに相談してよりよい解決法を導き出すようにします。必ずこれで解決するということはありませんが、不安な気持ちを抱えている高齢者の気持ちを安心させるようにさせることが肝心です。

●まとめ

高齢者は身内ですから、腹を割って話すことも大切です。

「ここにいてほしい」という気持ちを正直にぶつけることで、わかってもらえることもあります。

大切なのは嘘をつかない、声を荒げないことです。できるだけ高齢者本人の気持ちに寄り添い、できないことはできない、無理なものは無理ということもやんわりと言わなければいけません。

高齢者の帰宅願望は、安心できる場所いわゆる「安住の地」を探している場合が多いのです。

機能低下が進んだ高齢者の場合は、それがどこにあるのかどうしたら解決できるのかは、誰にも答えが見つかりません。

とにかく安心してもらう、安らいでもらうこと、そのためにはどうしたらいいのかを模索していくしかないのです。

 

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