介護疲れの対策とは?限界を感じた人に専門家がアドバイス

「介護」とは突然必要になり、何の準備もできないまま始まる事があります。

要介護者の状態によっては24時間の介護体制が必要で、日々の繰り返される介護は本当に大変ですよね。

介護が始まった当初は優しく接せられていたのに、終わりが見えず毎日の介護に疲れ、すでに介護に対して限界だと感じてる方もいると思います。

介護に疲れ、行き詰まったり気持ちにゆとりがなくなったりしたら、どうすれば良いのでしょうか。
今回お話しする介護疲れの対策により、日頃の介護が少しでも楽になれば幸いです。

介護に疲れたらまずは限界点を見据える

終わりの見えない介護により、疲労や不安が募り、介助者が体を壊してしまったという話もよく耳にします。

身体機能や認知機能の低下、さらなる介護負担の増大も想定されるでしょう。

それを解決する策の1つとして、終わり=限界点を決める事が挙げられます。自宅での介護に疲れ、介護に限界を感じたら、例えば老人ホームへの入所を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

老人ホームでは、食事や入浴、排泄介助や夜間帯の安否確認など、日常生活全般に渡る介護は施設職員が行いますので、ご家族は日常的な介護から開放されます。

面会は比較的自由にできるので、もちろんご家族が施設に行って会う事も可能です。毎日の「しなければならない介護」から、行ける時間を自分で選択し要介護者と向き合えるようになり、介護負担は劇的に軽減すると思います。

身体的介護疲れの軽減

初めて介護を行う時、正しい知識と技術なく行うと思わぬアクシデントを招く危険性があり、また介助者の身体的負担も大きくなります。そこで検討して頂きたいのが、介護の内容に合わせ少し住環境を変えたり、福祉用具を導入したりする事です。

道具を使用する事は人的サービスの利用とは違い、抵抗を少なく開始できるのではないでしょうか。

排泄行為を例にとって見てみましょう。要介護者の歩行が不安定な場合、ベッドや居室からトイレまでの間に手すりがなかったり出入口に段差があったりなどすると、介助者はその一部始終を介助しなければなりません。

自力で歩行が可能であれば、手すりの設置や段差の解消(スロープ設置など)によって、要介護者が一人で行けるように住環境を整備します。

また、夜中に何度も起き、その度にトイレに付き添っているのであれば、ベッド脇にポータブルトイレを置き、夜間専用のトイレとして使用するのも良いでしょう。

介護保険サービスで福祉用具をレンタルや購入するにはケアマネジャーに相談するのが良いですが、保険を使わないのであれば通販サイトやホームセンターなどでも簡単に見つかります。

スロープも、敷居などの小さな段差に簡単に設置できる置き型の物や、使わない時はコンパクトに折り畳める物などがあります。

また、介助者の体の使い方によっても、その負担は軽減できます。最小限の力で効率的に介護を行うためには無理なく体を使う技術「ボディメカニクス」を活用すると良いでしょう。

介護疲れ軽減のためのボディメカニクス

以下、原則となるボディメカニクスをご紹介します。

①支持基底面積を広げる/両足の間隔(左右や前後など)をあけて立つ。

②重心を低くし近づける/腰を落とし、要介護者に重心を近づける。

③摩擦・抵抗を減らす/要介護者が腕を組んだり膝を曲げたりする事で、ベッドなどに接している面積を小さく

する。

④体を捻らない・腰を曲げない/腰への負担を避けるため、進行方向に足先を向け、膝を曲げて水平に重心を移

動させる。

⑤水平に移動する/要介護者を持ち上げず、水平に移動するよう移動元や移動先の高さを調整する。

⑥大きな筋肉を使う/指先や腕だけで行わず、腹筋や背筋、大腿筋などを意識し、筋肉を総合的に使う。

⑦テコの原理や重力を使う/例えばベッドで寝ている姿勢からベッドの端に座らせる際、要介護者の肩(力点)と腰(支点)を支え、足(作用点)の反動を利用して行います。

このように、要介護者が持っている機能を見極め、それを上手に生かして自力で行えるように配慮し、住環境の整備や福祉用具の選定を行います。

それと同時に、介助者の身体的負担も考慮し、体を痛めない介護技術を身に付ける事も大切です。

介護技術の講習は民間企業が有料で開催している他、自治体が無料で提供している事もあるので、住んでいる地域の地域包括支援センターや介護保険課などに問い合わせると良いかと思います。

精神的介護疲れの軽減

介護には身体的負担とともに、精神的負担も生じます。特に1人で介護をしている方は、その全てを背負っているため、大きな精神的負担がかかってしまいます。こういった精神的負担は、介護に対する考え方を少し変えてみたり、介護体制を見直したりして和ぐ事があります。具体的な例を挙げて見てみましょう。

①あるがままを受け入れる

年を重ねると足腰が弱ったり物忘れが多くなったりしますが、これはごく自然の流れ。それを避けたり改善しようとするのではなく、その流れに沿って寄り添うという意識が大切です。

②努力をしない

努力をして結果が出るものとそうでないものがあります。年を取る事は、努力によって止める事ができません。
また、どうする事もできない事に対して努力を続けると、結果が出ないでまたさらに努力をしてしまいます。介護の仕方が悪いから状態が変わらないのではなく、それは人間としての自然な現象なのです。

③ユーモアを持つ

要介護者を大切に想うがゆえに、ついつい真剣になりがちな介護。また、介護とは単調で味気ない内容かもしれません。しかし、介護とは日常の中にあり、要介護者にとっては普通の生活そのものです。真面目になり過ぎず、普通の日常生活を送るためにも介護を特別視するのではなく、介護の中に笑いやユーモアを見つける事が肩の力を抜くきっかけとなるのではないでしょうか。

④自分の楽しみを続ける

介護に追われ自分の趣味や仕事を辞める事は、ストレスを引き起こす原因となり、また要介護者もそれを望んではいません。誰にでも余暇は必要で、時には旅行に行って日常を離れる事も必要です。介護保険にはショートステイというサービスがあり、数日間施設で過ごす事ができます。自分の好きな活動を続け、自分の生活を楽しむようにしましょう。

⑤1人で抱えない

介護を1人で担うには相当な負担がかかり、また重度者の場合は介護方針なども介助者が1人で決めなければなりません。

「自分がやらなくては」という強い気持ちは時として重圧となり、介助者の心身に悪影響を及ぼします。介護の役割分担をしたり、その悩みや想いを他人に話したりする事で、心身の疲労が和らげられる場合があります。

しかし、「家族が認知機能が低下している」事実を他人に知られたくなく、友達や同僚に話しづらい方もいるでしょう。または、家族はいるが遠方に住んでいたり疎遠になっていたりと、介護を分担できない事情もあるかもしれません。

地域包括支援センターで介護疲れの相談を

介護は、個々に独特の状態が見られるため解決策の特定が難しく、介護に戸惑う事も多いかと思います。そのような時は、地域ごとに設置されている地域包括支援センターに相談してみてはいかがでしょうか。

地域包括支援センターは、地域住民の介護などの相談を請け負っている公的機関で守秘義務も課されています。

ケアマネジャーや社会福祉士など、その道のプロフェッショナルにより形成されているので、地域資源や介護サービスの情報が得られ、加えて同じ介護の悩みを抱える介助者の会などを開催している事もあります。

また、地域の施設とも連携しているので、認知分野の専門家など、その分野のスペシャリストを紹介してもらうのも良いでしょう。「現在抱えている悩みを共有し、具体的な対応策を一緒に考えてもらえる場所」、それが地域包括支援センターです。

相談程度と考えてる方も多いのですが、精神的な部分はやはり誰かに話すことで軽減でき、さらに介護の専門家から現在の介護の改善方法などのアドバイス、制度の活用方法などをしてくれる場合もあります。

介護に疲れた場合無料で相談できる地域包括センターに出向いてみるのも良いでしょう。

介護費用を抑えて精神的な介護疲れを抑える

介護にはおむつや尿取りパッドなどの消耗品を始め、介護サービスの利用料など、それに係る費用が心配である方も多いと思います。

やはりお金の問題は介護疲れの原因の一つといえます。

また、福祉用具は介護保険でレンタル可能は物とそうでない物、購入可能な物とそうでない物とがあります。導入する物やサービスが本当に必要かどうかをよく検討し、代替案も念頭に置き、費用面での折り合いをつけなければいけません。

介護保険サービスは、係った費用の1~3割(所得に応じる)を本人が負担します。重度の方が多くの介護を要し、負担額が多額になる事があります。

高額介護サービス費制度

それを軽減する制度が「高額介護サービス費制度」です。

これは、負担額に上限(所得に応じる)を決め、一定額を超えると免除となる制度です。

また、日々の消耗品に対する出費も、介護期間が長くなればなるほど嵩んできます。

そこで、通常介護保険の給付対象外であるサービスを、市町村が各々の財源から独自に提供している「横だしサービス」に目を向けます。

横出しサービスとは介護保険の給付対象外となるサービスを市町村が独自の取り決めで行うサービスです。

横だしサービスは市町村によって様々な内容があり、介護度や世帯所得に応じておむつを支給したり配食サービスを行ったりしているので、まずは地域の介護保険課などに問い合わせてみましょう。

介護疲れの対策まとめ

高齢化が進むに連れ、介護に係る家族の負担は社会的にも問題視されています。

ニュースなどでは頻繁に介護疲れによって事件に発展するケースが報道されていますが、報道されてないものも含めるとかなりの方が介護疲れに疲弊してるといえます。

こういった介護疲れを軽減するためにも介護保険サービスを始め、要介護者および介助者の負担を軽減できる制度は、無理のない範囲で介護を続けていく上でも重要な役割を担っています。

介護を頑張り過ぎず、また活用できるサービスを上手に利用する事が、要介護者と介助者の両者が自分らしい生活するために大切であると思います。

また、これまでの要介護者との関わりを踏まえ、家族にしかできない介護があります。それは、共に歩んできた思い出を語り合い、寄り添う事です。

優しい気持ちで接するためにも、どうか介助者自身が幸せである事を第一に考え、その幸せを要介護者と分かち合う介護を心に留めておいて頂ければと思います。

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