介護保険でレンタル、買取できる福祉用具とその費用

福祉用具には介護保険でレンタル・購入できるものがあり、必要に応じて公費で賄う事ができます。
今回は、介護保険で利用できる福祉用具をご紹介しますので、福祉用具を導入するにあたり参考にして頂ければと思います。
介護保険で利用できる福祉用具と費用
福祉用具は介護保険を利用しレンタルできますが、衛生面などを考慮し、レンタルに不向きである福祉用具は購入の対象となります。
また、レンタル品は認定された介護度によって借りられる種別に制限があります。
介護保険では、レンタルおよび購入に係る費用の1~3割(所得に応じる)を利用者が負担し、購入費は年度毎(4月~翌3月)に10万円(支給費=7〜9万円)までとされています。
以下、レンタル対象品と購入対象品、費用(1割負担の場合)の目安をご紹介します。
【介護保険のレンタル対象品】
①特殊寝台(800~1,200円/月)
電動式で高さが変えられるほか、背中部が上がったり膝下部が山型に持ち上がる介護用ベッド。
ベッドの高さを上げる事で介助者の負担軽減に繋がり、背中部はベッド上で食事をする時などに上げます。
背中部を上げる際は、膝下部を先に持ち上げる事で、ベッドの下方にずれ落ちるのを防ぎます。
②特殊寝台付属品(24~300円/月)
特殊寝台の利用に伴い必要となる付属品。
ベッド柵・マットレス・ベッド用手すり・ベッド用テーブルなどがこれにあたります。
③特殊なマットレス(300~1,200円/月)
寝たきりの方のための、特殊なマットレス。
体圧が分散されるようウレタンやゲルなど、適した素材が使用されています。時間を設定し、電動で空気を送り込むタイプのマットレスもあります。
④体位変換器(150~1,000円/月)
自力で寝返りが打てない方のために、体の向きを変えるための用具。
持ち手がついている枕などの手動のもの、左右の内圧を変化させる事で自動で体位を変換できるマットレスなどがあります。
⑤手すり(200~900円/月)
歩行(移動)・起居動作が困難な方が利用します。
ベッド脇や室内で利用する置き型・トイレを囲むフレーム・玄関の上がり框に設置する突っ張り棒などがあります。屋外用もあり、数段の階段と手すりがセットになっているタイプもあります。
⑥スロープ(50~500円/月)
室内外の段差を解消するためのスロープ。室内の小さな段差にはミリ単位で調整可能なスロープや、車いすで移動する際に用いる折りたたみ式の大きなスロープなどがあります。
⑦車いす(300~3000円/月)
コンパクトに折り畳めるものからタイヤが太くてしっかりしたものまであります。電動車いすや電動カートもレンタルの対象となっています。
⑧車いす付属品
車いすに装着する背もたれクッションや座面クッション。車いすに座ったまま食事をする方のために、付属テーブルもあります。
⑨歩行器(300~600円/月)
立つ事はできるが、杖では歩行に不安がある方が使用します。自身の前面3方向を囲み、持ち上げながら進むタイプや、脚にタイヤが付いているものもあります。買物カゴや椅子になる歩行器もあり、用途により選定します。
⑩歩行補助つえ(100~150円/月)
多点杖(脚または脚先が3〜4点)・松葉杖などが対象となります。ステッキなどの一点杖は対象外となるので注意しましょう。
⑪移動用リフト(1,000~2,000円/月)
玄関などに設置し車いすに乗ったまま昇降できるリフトや、もともと椅子が付いているリフトなどがあります。寝たきりの方を上から吊るし、ベッドから車いすなどに移動できる大掛かりなリフトもあります。
⑫徘徊感知機器(600~1,000円/月)
要介護者の離床や外出を介助者に知らせる装置。マット式や超音波式があり、ベッド脇や玄関先に設置し、センサーが感知すると専用端末が鳴ります。
⑬自動排泄処理装置(800~12000円/月)
寝たきりの方などがベッドに寝たまま排泄ができる装置。要介護者の排尿・排泄をセンサーで感知し、自動で吸引・洗浄・乾燥を行います。交換可能な部分は福祉用具購入の対象となっています。
※①②③④⑦⑧⑪⑫は要介護2〜5、⑤⑥⑨⑩は要支援1〜要介護5、⑬は排便機能付きは要介護3〜5(それ以外は要支援1〜要介護5)の方が対象となります。
【介護保険の購入対象品】
Ⅰポータブルトイレ(2,500円〜)
移動可能なトイレ。
寝室に置き、夜間のみの使用を目的としている方もいます。
簡易的ななものから、家具調で椅子のようなものまであります。また、和式便器の上に置き、洋式便器に変換するものも対象です。
Ⅱ自動排泄処理装置の交換可能部品(1,600円〜)
レンタル対象品⑬の交換が可能な部分。
陰部が直接触れるレシーバーや排泄物が通るホース・タンクが対象となります。
Ⅳ入浴補助用具(2,500円〜/シャワーチェア)
入浴時に使用する器具。シャワーチェア・浴槽に取り付ける手すり・浴槽内に置く台・要介護者の体に巻き付ける介助用ベルトなどが対象となります。
Ⅴ簡易浴槽(5,000円〜)
移動可能で排水工事を伴わず、空気で膨らませたり折り畳めたりする浴槽。車いすのまま入れる大きな浴槽もあります。
Ⅵ移動用リフトのつり具の部品(3,500円〜)
レンタル対象品⑪に結合し利用するつり具。
福祉用具の相談はどこですれば良いのか?
介護保険で福祉用具をレンタルするには、ケアマネジャーなどが作成するケアプランに、その使用目的が位置付けられる必要があり、合わせてレンタル品を貸し出す福祉用具専門店との契約後に利用できるようになります。
既に介護保険サービスを利用されている方は担当ケアマネジャーに相談しましょう。
また、介護保険で福祉用具の購入のみをしたい方は、ケアマネジャーを通さずとも直接福祉用具専門店にて購入できます。
その場合は、そのお店で「福祉用具購入費支給の申請書(介護保険で福祉用具を購入する際に市町村に提出する)」の作成ができるかを確認しておきましょう。
福祉用具とは、その時点での要介護者の身体機能をきちんと見極め、適した物を選定しないと、返って機能低下を招いてしまう危険性もあります。
通常、介護保険で福祉用具を導入する場合は、ケアマネジャーが要介護者の状態を見極め、要望を聞き取り、福祉用具専門員(福祉住環境コーディネーター)と恊働で選定を行います。
つまり、初めに導入する品目を選定するのではなく、まず要介護者や家族が「困っている事」や「これができるようになりたい事」などを聴取し、次に適した福祉用具を提案していくという流れになっています。
福祉用具を使用する目的を明確にし、一緒に課題の解決策を探す役割を果たすのが、ケアマネジャーと福祉用具専門員なのです。
介護保険で福祉用具をレンタルする際の注意点
原則、介護保険でレンタルできる福祉用具には、項目ごとに介護度の制限があるとお話ししましたが、該当する介護度以下でも借りられる場合があります。
例えば車いすは要介護2〜対象となりますが、要介護1の方でも下肢に障害があったり、日によって歩けなくなるなどの理由により借りる事ができます。
このように、基準となる介護度はありますが、個々の状態によっては対象となるので、「要介護1だから車いすは借りられない」と諦めず、担当ケアマネジャーに相談してみましょう。
また介護保険を使わず、自費で借りるという選択肢もあります。
その際の費用を、介護保険適用時と同額で設定している福祉用具店もあり、借りられる介護度になったら介護保険でのレンタルに移行します。
まとめ
年を重ねると足腰の筋力が低下し歩行が不安定になったり、物忘れが多くなったりします。
介護が必要になった際、その第一歩のサービスとして導入しやすいのが福祉用具です。
福祉用具とは、そういった状態を持ちつつも自分の足で歩いたり、危険を回避したりするのに役立ち、また介助者の介護負担を軽減するためにも用いられます。
ヘルパーなどの人的サービスには抵抗がある方も多く、道具や環境整備であれば精神的な負担も少なく開始できます。
要介護者の状態変化に伴い、必要な福祉用具も変わります。
都度、適した福祉用具を使用するのに、レンタルという形態は相応しく、また定期的に点検も行われるので安全に使う事ができるというのも大きなメリットではないでしょうか。