介護保険改正の最新変更内容をまとめて専門家が回答

介護保険法は1997年に公布され、2000年に施行されました。
介護保険制度は社会保険の仕組みの中で、高齢者の介護を保障するものとして始まったのです。
それまで、高齢者の介護は主に家族など身内によって行われてきたのですが、核家族化が進み、高齢者の一人暮らしが増えてきました。
そこで、社会全体で高齢者の介護問題を支えるという理念の元で介護保険制度が始まりました。
そして、介護保険制度が施行されて20年になろうとしている現在まで、多くの改正が行われてきたのです。
それは、介護をとりまく状況が時々刻々と変わっていく中で、世情ににあった介護保険制度を整備していかなくてはいけないという考えからです。
ここでは、これまでの介護保険法の改正の経緯と現在どのような改正が行われてきたかを紹介し、現在の介護保険制度についても説明します。
●介護保険2017年改正(2018年施行)
2025年問題が近づいてきて、約3年ごとに見直しが行われてきた介護保険法が2018年に施行されています。
2017年度の最新の主な改正点は以下となります。
・自己負担割合が最大3割負担
・福祉用具のレンタル価格の適正化
・共生型サービスの実施
・収入に応じた介護保険料徴収
2017年の今回も大きな改正が行われています。
要介護者に取って気になるのは自己負担割合の増加でしょう。
2017年改正までは、自己負担割合は、要介護者の所得が280万円未満は1割の自己負担、所得が280万円以上は2割の自己負担でした。
それが、今回の改正施行では、1割2割の負担の条件はそのままに、さらに所得が340万円以上の要介護者は3割の自己負担となったのです。
この3割の自己負担にも条件があり、単身世帯で340万円以上、2人以上の世帯では463万円以上で3割負担となったのです。
大きな負担を強いることになったのですが、3割負担となっても、自己負担額の上限は44,000円となっています。
また、厚労省の調査では、3割負担にあたる人は全体で12万人ということで、これは全利用者の3%ということです。
福祉用具のレンタル価格の適正化
福祉用具のレンタル価格の適正化についてですが、レンタル価格の多くは介護サービス事業者あるいはレンタル事業者の言い値によるものです。
レンタル価格は本来自由に決めていいものですが、要介護者にとっては法外なレンタル料は大きな負担になりますし、適正価格を超えたレンタル料を設定する業者がいないとも限りません。
そのため、全国平均のレンタル価格の好評や、レンタル価格の上限の設定がレンタル商品については求められることとなりました。また、事業所については、機能やレンタル価格の異なる複数商品の提示を義務づけたのです。
共生型サービスの実施
共生型サービスですが、これは、障がい者と高齢者が同じ事業所で介護サービスを受けやすくなる新しい仕組みです。
本来は介護保険と障害福祉に分けられた制度のもとでサービスを提供していたのですが、今後は共生型サービスを提供することになります。
今回の改正によって、障害福祉サービス事業所でも、介護保険サービス事業所でもどちらでも介護サービスを提供することができるようになったのです。
収入に応じた介護保険料徴収
収入に応じた保険料ですが、これは介護納付金における報酬制の導入です。これによって第2号被保険者である、40歳から64歳の被保険者の負担が収入によって変わることになります。
今回の改正では、被保険者の収入によって納付額が決められることとなったのです。
これまでの介護保険制度改正の流れ
2000年に施行された介護保険法の最初の改正は2005年に行われ、2006年に施行されました。
当初は5年を目処に必要な見直しを行うということで、第一回目の改正となったのです。
2005年介護保険法改正(2006年施行)
2005年度の改正の柱は以下の2点です。
・予防重視型システムへの転換
・施設給付の見直し
大まかな内容は、要支援者への予防給付としての給付と、施設給付の見直しです。施設給付の見直しでは、介護保険施設への食費や居住費の保険給付を対象外(全額自己負担)としています。同時に低所得者への補足給付の新設と第1号被保険者の保険料の設定などがおこなわれました。
2011年介護保険法改正(2012年施行)
介護保険法が施行されて10年経過し、介護保険サービスの利用者が当初の3倍となりました。重度の要介護者の増加、介護サービス充実への高い要望の増加などが課題とされ、さらには予想を上回る介護力の弱い単身世帯や高齢者の増加が大きな問題とされた年でもあったのです。
介護者の人材確保を含めて、「地域包括ケアシステム」の実現を図る以下のような大々的な改正が行われました。
・専門施設と介護の連携の強化等
・介護人材の確保とサービスの質の向上
・高齢者の住まいの整備等
・認知機能低下対策の推進
・市町村(保険者)による主体的な取り組みの推進
特に国家資格を持った専門家と介護の連携の強化については、重度の要介護者に対して迅速に対応ができるように、定期巡回や訪問介護などの複合型サービスを創設しました。
また、地域支援事業の一環として、この頃から市区町村の判断でできることが多くなっていきます。これは介護に対して即応体制が取れてきた証しでもあり、大きな進歩となったのです。
2014年介護保険法改正(2015年施行)
この年の介護保険法改正の大きなポイントとなったのが、専門支援と福祉の一体化です。2014年6月に「地域における介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立しました。これは介護保険法などの改正案を一つにまとめたものです。これは、高齢者人口の一つのピークとなる団塊の世代が75歳以上になる、2025年問題に対応したものです。
高齢者介護施設の拡充を見据えながら、可能なかぎり住み慣れた地域、住み慣れた自宅で介護を受けることができるように、介護とそれに関連する専門家がそれぞれ連携しあい、必要なら一体化して介護に取り組むこととしています。主な改正点を以下に示します。
・介護サービス利用料の自己負担の割合
・高額介護サービス費の負担上限額
・介護保険3施設の食費・部屋代の減額
・特別養護老人ホームの入所対象者
・要支援1・2の人が利用する介護予防訪問介護・介護予防通所介護
大きいところでは要介護者の負担が1割から2割負担となりました。
一定以上の所得のある人が対象ですが、2014年改正の介護保険法は、軒並みに要介護者にとって負担増を求めるものとなっています。
所得制限等ある程度の救済措置もあるのですが、改正ごとにある程度の負担を求める傾向は変わらず、高齢者が増加していく中で、負担増は避けられないものとなったのです。
介護保険改正はこれからも?
2018年現在施行されている介護保険法では、「高所得者ほどより多くの介護保険料を負担する」仕組みがより鮮明になりました。
介護保険料の負担は、健康保険料と同じで、より負担額が増加していく傾向にあるのは間違いありません。
社会全体で高齢者を支える理念は、年金制度でも言われてきたことですが、介護の世界はそのことがより強調される結果となっているのです。
また、介護保険料をより多く徴収する動きは、これからも続いていくことは間違いありません。
それは、高齢者を支えることはもちろんですが、介護サービスに携わる人の生活を支えること、さらには介護を行っている家族を支えることにもなるのです。