地域包括支援センターとは?役割と利用方法について

自宅で亡くなることの方が難しくなった今、誰もが「老後生活」について考えなくてはいけません。
しかし、介護が必要になってもどうしたらいいのかわからない、介護保険料は支払っているけど、どういったもの?といった人も少なくありません。
実際にその立場にならないと、自分のことと思えないからです。
しかし、介護が必要になってからでは、焦るばかりでどうしていいか混乱してしまいます。
そんな介護に迷う人の助けになるのが、「地域包括センター」です。
特に、住み慣れた地域で老後を過ごしたい人は、ぜひ覚えておきたい「地域包括センター」の役割について詳しく紹介します。
地域包括センターとは?
地域包括センターの運営主体は、市区町村です。
介護・保健・福祉の専門知識を持った職員が相談に応じていて、高齢者が住み慣れた地域で、安心して生活できるように、「介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援」などを側面からサポートしている施設です。
また、介護保険の窓口も行っているので、要介護認定では、自治体の窓口以外でも地域包括センターを通して手続きをすることができます。
※専門知識をもった職員:保健師あるいは経験のある有資格者、社会福祉士あるいは、高齢者福祉に関する相談業務に3年以上従事した社会福祉主事、主任ケアマネジャーなどのあらゆる部門に精通した専門家です。
運営主体は市区町村といった自治体ですが、自治体から委託された社会福祉法人、社会福祉協議会、民間事業者などが運営しているケースもあります。
地域包括センターは全国で4557施設があります(平成26年度)。そのため、2~3万人の生活圏に一つの地域包括センターが設置されていると考えていいでしょう(イメージ的には中学校の学区に1つ程度です)。
地域包括センターの役割とは?
全国に4,500ヵ所を超える地域包括センターが存在しています。
高齢者の、生活相談窓口としての役割が目的でしたが、現在では、介護や生活全般での相談窓口でもあり、その役割は拡大しているといってもいいでしょう。
地域包括センターは、介護保険制度が2006年に改正されたことで設置されるようになりました。
ですから、10数年という歳月で全国に4,500を超える施設数というのは、かなりの急ピッチで施設ができたといっていいでしょう。
地域包括センターの主な役割は以下の通りです。
①介護予防ケアマネジメント
保健師・専門家が主に担当し、介護予防などのケアプランの作成などを行います。
要支援と認定された人、これから介護が必要になる高齢者を対象として、状況の悪化を防ぎ、自立した生活が少しでも長く持続できるように「介護予防」を目的とした支援を行うものです。
そのためにも以下の項目について高齢者の分析を行います。
・歩行が正常にできるか(まっすぐに歩けるか等)
・公共交通機関を一人で利用できるか
・行動範囲・移動能力の把握
・日常生活の状況(家庭生活は充実しているか等)
・コミュニケーション能力の確認(社会参加ができているか、対人関係はどうか等)
・身体状況はどうか(健康管理や心の状態等)
以上の事柄について分析し、将来的に介護が必要になる高齢者について、以下について参加を促進します。
・運動機能の向上
・栄養の改善
・口腔機能の向上
・認知機能の低下予防
・心の健やかさを保つ
②総合相談・支援事業
地域に住んでいる住民の、多種多様な相談に幅広く対応しています。
国や市町村による制度はいくつもありますが、対象となる条件や利用方法について知られていないものがたくさんあります。
介護保険だってその1つです。
地域包括支援センターは、必要な人に必要な支援が行き渡るような支援をしていて、主に社会福祉士が担当しています。
③権利擁護事業
成年後見制度の活用促進や、高齢者虐待への対応等を行っています。
これも主に、社会福祉士が担当している業務です。
高齢者が安心して生活できるように、さまざまな権利を守ることを目的としています。
※成年後見制度:認知機能低下の進行などで判断能力が衰えてしまった人に対して、周囲の人が後見人となる制度です。必ずしも身内が後見人になる必要はありません。目的は、本人の財産を不当な契約から守ることです。
④包括的・継続的ケアマネジメント事業
以下の支援・助言・相談を行っています。包括的な相談・支援業務となるので、在籍する全ての相談員が相談・支援業務にあたります。
・「地域ケア会議」を通じて自立支援型ケアマネジメントの支援事業を行います。
・ケアマネジャーが日常的な個別指導や相談業務を行います。
・支援困難事例などへの指導や助言を行います。
※地域ケア会議:地域包括センターが主催するもの。相談内容から、個別ケースの検討や地域課題の検討が話し合われます。検討内容によって、参加者や規模はその都度異なります。
地域包括センターではどんなことが相談できる?
具体的に、どのように地域包括センターを利用したらいいのでしょうか。
地域包括センターは介護だけではなく、高齢者を介護・保健・福祉といった総合的な面からサポートする施設です。
そのため、高齢者に関することでしたら、まずは相談窓口に連絡するとよいでしょう。
適切にアドバイスをしてくれる場合もありますし、相談内容が複雑でしたら、その内容に精通した専門家に取り次いでくれます。
専門家の間で連携が取れていますから、個別の内容でも総合的な内容でも、ワンストップで相談できるような仕組みになっています。
具体的な相談内容は以下の通りです。
・地域で利用できる介護施設を知りたい
・福祉サービスってどんなこと?
・親の介護で困っている
・近所で虐待に遭っている高齢者がいる…
・成年後見制度について知りたい
・要介護認定を受けたいんだけど
・詐欺に遭ってしまった
高齢者は、「まだまだ自分は大丈夫だ」と、自分の力を過信しがちです。
それが、高齢者が起こす交通事故にもつながっているのは、衆知の事実です。
また、高齢者の場合、いつまでも自分一人で何でもできると思うプライドが強い傾向もあります。
そうなると、「他人に頼ることは迷惑をかけること」と思いがちになり、多少困ったことがあっても自分なりに解釈するなりして、やり過ごしてしまうか、相談しないケースが多いのです。
そのため、家族などの身内が気づいたときは、大変なことになっていたということにもなりかねません。
大事になる前に、高齢者のこれからのことや身の回りのことに対して、意識の改革が必要ですし、身内の人も高齢者の変化に敏感に気づくなどの配慮が必要です。
離れて暮らしていると、目が行き届かない部分が少なくとも出てきます。
そういった場合も、成年後見制度を利用し、さらには地域包括センターを活用するようにすると、何かしらの事件に巻き込まれるようなことも避けることができます。
地域包括センターの利用条件
介護についてはどのような相談でもいいのですが、原則として、その対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者であり、その人を支援する人(身内など)が利用できます。
高齢者と相談する人が離れて暮らしている場合は、高齢者が住んでいる対象地域の地域包括センターに連絡します。
介護を必要とする人や家族にとって地域包括センターはどう使えばいい?
基本的に、高齢者についての相談でしたらなんでもOKです。
地域包括センターはさまざまな面(介護・福祉・保健)で、総合的に支援することを目的としているからです。
ですから、相談にかかる費用も無料となっています(相談から利用するサービスについては有料のものがあります)。
具体的な相談事例を紹介します。
事例①
長男夫婦が、地方で一人暮らしをしている母親を自宅に呼び寄せることになりました。
住宅はすでに2世帯住宅に改築済みです。
母親も住み慣れた地域を離れるのは忍びなかったのですが、それでも将来のことを考えて同居を決意しました。
しかし、同居してからというもの、親しい友人もなく、長男夫婦は共働きの現役世代ですから、仕事でいつも不在です。
孫たちがかまってくれることもないので、自宅にこもりがちな毎日です。
しかも、2世帯住宅ですから、自分の居間があり、そこにいると誰も訪れない状態で、いつも家ではひとりぼっち状態なのです。
そのようなことから、寂しさのあまり心のバランスを崩してしまいました。
やっと、自体の深刻さに気がついた長男夫婦が相談したのが地域包括センターです。
センターの担当スタッフが、地域の老人会の案内、さらには地区で行われているカラオケ教室など、さまざまなイベントや教室の紹介をしてくれたのです。
そこを通して、親しい友人もでき、母親も生活にハリが出て来たと笑顔を取り戻すことができたのです。
事例②
一人暮らしのAさん(78歳)は、かつては自治会の役員などを務めた地域の名士でした。
社交的で世話好きで人望が厚かったのですが、妻が亡くなってからは、ふさぎ込むような毎日です。
近所の人も、見かけることが少なくなっていました。
知人が久しぶりに訪ねていくと、在宅しているはずなのになかなか出てこないのです。
やっと出てきても、誰だか分からない様子で、着ているものも薄汚れたパジャマ姿。
「これは尋常ではない」と思った知人は、認知機能が低下しているのでは?と地域包括センターに連絡したのです。
すぐに相談員が訪問し、Aさんを保護して家族に連絡しました。
その後、介護申請(介護認定)をして、介護サービスの見守り強化を受けることになりました。
地域包括支援センターでは何ができる?利用事例からわかること
いくつかの事例のように、地域ぐるみで高齢者を保護し介護する仕組みができています。
その中心的な存在が地域包括センターなのです。
また、地域の一人暮らしの高齢者をピックアップし、地域包括センターの方からアプローチを開始し、高齢者を保護する事例もたくさんあります。
高齢者はまだまだこれからも増え続け、団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は、さらに介護の需要が高まると予想されています。
その対応策として、地域包括センターに寄せる期待は大きく、全国に4500ヵ所も設置されているのも期待の大きさを物語っています。
もちろん数が多いだけではなく、地域での横のつながりがあることで、「横断的な支援ができる」その活動内容が大きく注目されているのです。
まとめ
これからの高齢者の増加を見据えた対抗策として、地域包括センターの役割は大きなものがあります。
寝たきりではなく、いつまでも元気で自立した生活ができることが誰にとっても幸せなことです。
それを支援するために地域包括センターがあります。
また、現状に満足することなく、地域包括センターは、高齢者の自立支援を行いながら、さらなるサービス提供体制の構築を推進して、これからの高齢者介護の要となっていくでしょう。