要介護認定の基準とは?何によって決まる?

介護保険制度において、介護被保険者が介護サービスを受けるためには、要支援・要介護の認定を受けなくてはいけません。
介護認定については、65歳を境に大きく変わってくるのですが、ここでは一般的な65歳以上の高齢者の介護認定とその基準について説明します。
介護認定の仕組み
介護保険被保険者が、介護サービスを受けるには、要支援あるいは要介護の認定を受ける必要があります。
要支援というのは、日常の生活の中で、家事や身支度などについて支援が必要になった状態であり、要介護は寝たきりや認知機能障害などで常時介護を必要とする状態です。
被保険者は必要なときに、介護サービスを受けるため、月々介護保険料を納付し、それによって安価な自己負担で介護サービスを受けることができるのです。
介護サービスを受けるために必要なのが、どの程度の要支援・要介護状態にあるのかという状況判断です。
そのため、被保険者がどのような要介護状態あるいは要支援状態になるかということを認定しなくてはいけません。
その認定を行うのが要介護認定なのです。
その要介護認定は、保険者である市町村に設置されている介護認定審査会で認定されることとなっています。
要介護度の認定基準
介護認定審査会は、保険や、さらには福祉の学識経験者に酔って構成されています。
そこでは、被保険者の心身の状況や専門家の意見書などに基づいて審査認定を行うのです。そのため、介護認定審査会にかけるためには、意見書が必要となります。
意見書に基づくコンピュータ認定が行われます。
それは、基本調査79項目によるもので、さらにそれに基づく二次認定が行われ、最終的な要支援・要介護度が認定されるのです。
介護認定は7つに区分されます。内訳は、「要支援1~2」、「要介護1~2」です。この要支援度、要介護度の区分によって受けることのできる介護サービスの内容が変わってくるのです。
要介護認定で次の5つの項目によってチェックされます。
・身体機能・起居動作
・生活機能
・認知機能
・精神・行動障害
・社会生活への適応
以上の5つです。
それぞれの項目について簡単に説明します。
・身体機能・起居動作
生活をする上での基本動作がどの程度できるのかを確認します。確認する項目は、「麻痺」や関節の動きを見る「拘縮(こうしゅく)」、他には「聴力」、「視力」、「寝返り」など13にわたる広告があります。実際に認定希望者の身体チェックをおこない、さらに家族に聞き取りなどをして確認します。
・生活機能
日常の生活動作です。「食事」、「排尿・排便」、「衣服の着脱」、「外出」などの行動について確認します。
・認知機能
「自分の生年月日が言える」、「年齢が言える」、「名前が言える」などの項目を確認します。主に意思の伝達ができるか、短期的な記憶に問題がないか、さらには自分が今どこにいるのかなども確認します。
・心の安定や行動について
基本的には、過去一ヵ月において、社会生活を送る上で不適当な行動がなかったかを確認します。あった場合は特にどのようなものかを聞き取り調査します。例えば、「感情が不安定になる(泣いたりわめいたりする)」の問いに対して、「ない」、「ときどきある」「ある」のいずれかで回答します。
・社会生活への適応
買い物や調理ができるか、さらには近所つきあいができるかなど社会生活に適応しているかどうかを確認します。
●要介護認定等基準時間
要支援度・要介護度を基準時間によって認定します。
時間といっても介護サービスにかかる時間ではありません。
介護の必要性を判断するための基準や指標となるもので、厚労省が設定している時間なのです。上に上げた5つの項目について数値化し、それを元にコンピュータが数値化し、「要介護認定等基準時間の推計値」を算出するのです。それによって、次のように要支援度・要介護度が認定されます。
・要介護認定等基準時間の分類
要支援1:要介護認定等基準時間が25分以上32分未満
要支援2: 〃 32分以上50分未満
要介護1: 〃 32分以上50分未満(時間は同じですが、心身状態の分類が要支援2とは異なります)
要介護2: 〃 50分以上70分未満
要介護3: 〃 70分以上90分未満
要介護4: 〃 90分以上110分未満
要介護5: 〃 110分以上
※上に挙げた基準時間の他に、「これに相当すると認められる状態」が付随されます。
●要支援・要介護の具体例
実際には基準時間といってもコンピュータで出された数値です。一般の人にはわかりにくい数値と言えます。以下に要支援・要介護の具体例を区分別に示します。
・要支援1
基本的な日常生活は自分で行うことができます。一部について介助が必要とされる状態です。介護サービスを受けることで、要介護状態になることが予防できる状態です。
・要支援2
要支援1よりも、立ち上がり動作や歩行などで運動機能に若干の低下が見られる状態です。すべてではなくときどきについて、介助が必要とされる状態です。要支援1と同じで介護サービスを受けることで、要介護状態になることが予防できる状態です。
・要介護1
身の回りのことはほとんどできます。ただし、要支援2よりも運動機能や認知機能が低下しています。そして、思考力や理解力に問題があると判断され、部分的に介護が必要となる状態です。
・要介護2
要介護1よりも日常生活に対しての能力や理解力が低下している状態です。食事や排せつなど身の回りのことでも介護が必要とされる状態です。
・要介護3
食事や排せつなどが自分でできない状態です。全面的に介護が必要な状態で、立ち動作、歩行もできません。
・要介護4
要介護3よりも動作能力が低下していて、日常生活全般において介護が必要な状態です。
・要介護5
要介護状態で、最も重度な状態。ここまで介護度が進んでしまうと、一人で日常生活を送ることはできません。あらゆる場面で介護が必要で意思の疎通も困難な状態です。
●要支援・要介護度について
介護認定審査会によって要支援・要介護度が認定されます。重い認定になるほど家族の心配は増すことになるのですが、反対に手厚い介護サービスを受けることができるので、家族の介護負担が軽くなるというメリットもあります。
そのため、要介護1に認定されているのに、本当は要介護2ではないかと、実際に高齢者を介護している家族としてはそう思うこともあるでしょう。
介護サービス料も各市町村が負担している部分も大きいので、昨今では介護度の認定が厳しくなる傾向になっています。そのような中で、要介護度に納得のいかない場合、介護度の変更をするためにはどうしたらいいのでしょうか。
要支援・要介護度の認定は、ある部分まではコンピュータが聞き取り調査などからはじき出すのですが、2次認定では話し合いの中で要支援・要介護度が最終決定されます。
あくまでも人の判断ですから、家族にとっては不満の残る結果になることが少なくありません。
介護認定結果に納得できない場合は、どうしたらいいのでしょうか。
●介護認定に納得がいかない場合
高齢者については、家族が一番わかっています。
そのため介護認定については、不満の出ることが少なくありません。市町村サイドにとっても介護サービス料の負担をできるだけ少なくしたいと考えているので、介護認定が厳しめになっている背景もあるのです。
・不服申し立て
要介護度の認定が実際と違うと思ったら、介護認定が下りてから60日以内に市町村の介護保険の担当課に不服申し立ての申請をすることができます。これは、再度介護認定を行ってもらう方法で、新しい結果が出るまでかなりの時間(数ヶ月)かかります。望む結果が出るとは限らないので、不服申し立てをすることは少ない傾向にあります。
・要介護認定の区分変更申請
不服申し立てよりも、要介護認定の区分変更申請のほうが多い傾向にあります。変更申請であれば、30日くらいで新しい結果が出ます。同じ結果になることもありますが、区分変更申請を行う主な理由は、認定に対する不満ということではなく、「介護認定を受けてから、その後さらに状態が悪化したので、現状に合った認定をしてもらいたい」という理由です。不服申し立てよりもオブラートに包んだ形となるので、要介護度を変更したい場合はおすすめと言えます。
まとめ
要支援度・要介護度が重くなるほど、介護サービスは手厚くなります。その分介護料の負担は増しますが、反対に介護する家族の負担は軽減されます。
介護を受けるために支払ってきた介護保険料であり、被保険者はそのサービスを享受する権利があることを考えると、適正な認定をしてもらいたいのが心情です。
そのためには、地域のケアマネージャーの口添えや意見書などが大きく影響する場合があります。
診察などで、実際にできないことはしっかりとアピールして、適切な介護認定を受けるようにしたいものです。