在宅介護と老人ホームどちらが良い?専門家の回答がこちら

在宅で親族を介護されている方は「老人ホームに入った方が良いのかな?」と考えてしまう機会は多いのではないでしょうか?
在宅で介護をしてると介護にとられる時間は多く、自分の時間を犠牲にして介護を続けている人がほとんどですので、将来的には老人ホームも考えている方もいます。
実際に在宅介護から老人ホームへ移行された方のアンケートでは6割以上の方が「介護の負担が減った」「心理的負担が減ってよかった」と回答しています。
また最近では一時入居金が必要なかったり、比較的月額費用の安い有料老人ホームも増えており、老人ホームへの入居は敷居も低くなり、メリットもそれなりにあるといえます。
老人ホームへ入居したらいいのか、在宅介護を続けていけばいいのかまだ判断できない方向けに在宅介護を続けるメリットデメリット、老人ホームに入居するメリットデメリットについてご紹介していきます。
在宅介護のメリットデメリット
それぞれのメリットデメリットを知ることによって、在宅介護と続けるか老人ホームへ入居するかの検討の余地が出てきますので是非覚えておいてください。
・在宅介護のメリット
在宅介護をしていく上でのメリットとしては
①住み慣れた環境で過ごすことが出来る
②費用を抑えることが出来る
③在宅介護サービスを受けることが出来る
この三つが挙げられます。
それぞれ見ていきましょう。
①住み慣れた環境で過ごすことが出来る
自宅という慣れた環境で生活をすることは本人にとって非常に良い状態です。高齢になっても、最近の新しい記憶は忘れても、長期記憶であれば覚えていますので、自宅などの方が生活には向いています。
ときどき、物忘れなどはあったとしても、家事や身の回りの事は出来ることが多いです。
昔は自宅で家族に見守られながら余生を過ごすということが当たり前のようにありましたので、そういった余生を過ごしたいという方にとっては非常にメリットがあるといえます。
②費用を抑えることが出来る
やはり施設に入居をするとどうしても施設利用料がかかってきます。
在宅に居る場合は、その費用がかかりませんので金銭的な負担は非常に軽いと言えます。
仮に老人ホームに入居をしたとすると場所や人によって変わりますが施設利用料はかかっています。
これを亡くなる時までずっと負担をしていくのは、いくら年金があったとしても難しい方も多いかと思います。
在宅でも介護サービス費を使っている場合は利用料がかかってきますが、施設利用料に比べると安いものですので、在宅で生活をする方がお金がかからないといえます。
③在宅介護サービスを受けることが出来る
在宅に住んでいる方は在宅介護サービスを受けることができます。
訪問介護などに来てもらって身体介護などをしてもらうことが出来ますし、通所介護等であれば日中預かってもらうことも出来ます。また、ショートステイでは短期間のお泊まりもありますし、福祉用具を低額で借りたり、住居のバリアフリーをする事も出来ます。
要介護度が重い方であれば、日中は常にデイサービス、1カ月に数日はショートスティという利用をして、出来るだけ家族に介護負担を軽減する方針でサービスを利用している方もいますので、全て家族が介護をしなければいけないという訳ではありません。
在宅介護のデメリット
メリットが分かれば次に在宅で介護をするデメリットをご紹介します。
①家族の負担が大きい
②状況が悪化する場合がある
③満足な介護を受けることが出来ない
④家庭が崩れてしまう可能性もある
デメリットとしてはこの四つが挙げられます。
①家族の負担が大きい
在宅介護サービスがあるので、ある程度は介護保険のサービスで対応をする事が可能ですが、在宅介護サービスは24時間利用できるものではありませんし、土日など休みにしている所がほとんどです。
その為、介護サービスを受けれない時間帯はどうしても家族の介護が必要になり、家族には負担がのしかかります。
会社勤めをしていた息子が自分の親を見るのに退職をした、子育ての時期と重なって子供を自分の親に預けて義母のお世話をしたといった事例が後を絶たず、何かを犠牲にして介護をするケースが非常に多くあります。
このような事例は社会的な損失は非常に大きく社会問題としても取り上げられています。
②状況が悪化する場合がある
慣れてるとはいえ、自宅で生活をする場合、高齢者は日常に危険が潜みます。
よくあるのはバリアフリーをしていない自宅であれば転倒をする可能性が有ったり、記憶の問題がある方は、一歩外に出れば危険な場面に遭遇することも珍しくありません。
怪我をすることによって現状が悪化してしまう可能性もありますし、動かないことによって悪化するケースもあります。
また、1人で過ごす時間も増えていきますので、進行が早まるリスクもあるでしょう。
③満足な介護を受けることが出来ない
在宅介護サービスでは様々なサービスを受けることが出来ますが、常に介護を受けれるわけではありません。
そのため、常に介護をしてほしいと考えている方は満足したサービスを受けれないという気持ちになってしまいます。
また、いくら介護が必要だからと言っても、事業所の数や事業所の人員の関係から受けたくても受けることが出来ないという介護難民もいます。特に地方ではその傾向が強いと言われています。
④家庭が崩れてしまう可能性が有る
自分の親であればきちんと心を込めて介護をすることが出来ますが、義親に対しては気持ちを込めて介護をするのは難しい方が多いです。
例えば、夫の親を介護する妻は心理的に非常にストレスが溜まりやすいと言われています。
夫は働き、自分が義親の介護を一手に引き受けているとストレスが溜まり、夫婦関係も良好に行かないケースもあります。
介護疲れのストレスによって家族の関係にひびが入るという事態になることは決して珍しくありません。
きちんとお互いが納得した上でないと、在宅介護を続けていくことは難しいと言えるでしょう。
★ポイント
介護は子育てと違っていつ終わるのか分かりません。
その中で家族が自分の時間を犠牲にして、介護に徹すると自分の生活自体が破たんしてしまう可能性があります。
もちろん在宅介護を続けていくのはメリットもありますが、介護をする為の退職などは自身の安定した生活に支障をきたす可能性が有ります。
老人ホーム入所のメリットデメリット
老人ホームに入所するとどのようなメリットデメリットがあるのでしょうか。きちんと知っておくと老人ホームへの入居も十分検討することが出来ます。
老人ホーム入所のメリット
老人ホームに入所するメリットは以下の点が挙げられます。
①介護の負担が軽減する
②仕事を続けることが出来る
③費用はそこまで高くない
④親(義親)との関係も良好になる
この四つの点が挙げられます
①介護の負担が軽減する
老人ホームに入所すると基本的には家族が介護をする事はありません。全て職員に任せることができますので、それだけでも非常に大きなメリットであるといえます。
特に介護度が重い方をみていた方や、身体介護をしていた方は非常にありがたく思い、体調も良くなったという声が多いです。
介護の負担はそれだけ重いものですので、介護の全てを老人ホームに任せられるのは肉体的にも精神的にも良いことであるといえます。
②仕事を続けることが出来る
介護休暇などの制度はありますが、これは長期間取れるものではありません。やはり在宅介護を続けていこうと思うと仕事を継続して行うのは難しくなります。特に残業や夜勤などをしている方は難しいと言えます。
しかし、老人ホームに入所してもらうと、仕事になんら支障は出ませんし、残業や夜勤を行うことも特に問題はありません。仕事を継続することが出来ることによって、金銭的な心配の必要もなくなるのです。
③費用はそこまで高くない
費用に関しては、特養や老健などの場合所得に応じた利用料金になりますので、想定していたよりも安く済むケースも多いです。もし今入居したらいくらぐらいになるのか気になった場合は、老人ホームの職員に聞くようにしましょう。
また前述の通り、最近は入居一時金がかからなかったり、月額費用の安い有料老人ホームも増えてきています。
老人ホームはお金がかかる場所と考えてしまいがちですが、実際は違うことも多いですので事前に把握しておくこと大切です。
④親(義親)との関係も良好になる
老人ホームへの入所で最も懸念されるのが関係性の悪化でしょう。「老人ホームに入れたら恨まれる」と思い入所に躊躇してしまう方もいます。確かに入所当初は反発があることもありますが、本人からしてみても老人ホームに入所していた方が楽ですので、徐々に慣れてきます。
在宅で介護をしている場合は、介護者もストレスを溜まりやすく関係性が悪化しやすいです。しかし、老人ホームに入所することによってお互いのストレスが軽減して関係が良くなるケースも多いのです。
⑤体の管理が徹底している
老人ホームは専門家が常に要介護者の体の調子を見ています。施設によっては有資格者が常駐する場合もあり、自宅よりも体の状態の管理が徹底されています。
またほとんどの介護施設ではバリアフリーが施されており、さらに施設内の温度管理が一定であり、温度変化がないので体への負担が少ないというメリットもあります。
老人ホームに入所するデメリット
メリットに対して老人ホームに入所するデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
①孤独感を持たれる
②すぐに入れないことも
③費用がかかる
この三つが挙げられます。それぞれみていきましょう。
①孤独感を持たれる
老人ホームに入所していると家族から離れて、親族のいない中生活をしなければなりません。そのため、孤独感を感じてしまうことも多々あります。もちろん老人ホームには職員もいますし、他の高齢者もたくさんいますので寂しい気持ちは薄れることもありますが、心の根底に孤独感を持ちながら生活を送っている方もいます。
②すぐには入れないことも
例えば、特養であれば要介護3以上の方しか基本的には入居することが出来ません。
現在要介護1や2の方であれば要介護3の状態になるまで待たなければいけません。
また、「特養待ち」というキーワードが流行るほど、特養は空きを待っている方が非常に多いのです。
特に価格が安い従来型特養であれば100名待ちという状態もあります。価格の高い新型特養などであればすぐに入れますが、価格が高く躊躇してしまう方もいます。
入りたいからといって老人ホームが必ず空いているわけではありませんので注意しておきましょう。
③費用がかかる
費用はそこまで高くはありませんが、やはり在宅介護に比べるとどうしても掛かってしまいます。
特に若くして老人ホームに入所する方であれば10年以上老人ホームで過ごすこともありますので、長期間費用が掛かってくることに注意しておきましょう。
また、介護度が上がるとそれだけ金額も上がったりします。
費用に敏感な方は老人ホームに入所するよりも、在宅介護をしていった方が良いでしょう。
★ポイント
入所するメリットとデメリットを考えると、大きくは介護者の負担軽減がメリット、費用が在宅よりもかかるというデメリットが分かります。
お金が多少かかってもいいから、精神的、身体的な負担を減らしたいという方であれば老人ホームへの入所をお勧めします。空いた時間で働くことが出来ればかかるお金も多少減らすことが出来るでしょう。
まとめ
在宅介護と老人ホームへの入所はどちらが良いのか、一概には言えませんが、総合的に考えると費用面がクリアできれば老人ホームへの入所がおすすめです。
老人ホームは介護を受けるために建てられた建物ですので、要介護者にとって過ごしやすく快適な環境が整っていると言えます。
また、家族からしても介護という大きな負担の部分を任せられるので、安心して過ごすことが出来ます。
実は、私の祖母が一人暮らしが難しくなり、私の家族で受け入れ、在宅介護が始まったのですが、認知機能が低下した祖母に振り回され、夫と私、そして親族との関係が悪くなりました。
冷静に考えれば仕方ないことでも、初めての介護や日常生活の世話で家族はかなり悪化しました。
しかし、義理の祖母が近隣の老人ホームに入ってからは、まったくそのような関係はなくなり以前のように普通の家族の関係に戻りました。
費用の問題もありますが、もし在宅介護に限界を感じる場合は施設への入所も検討しましょう。
介護費用や老人ホームの費用がネックで、施設への入居が問題なのであれば、こちらの記事が参考になるかもしれません。