要介護認定の変更はできる?納得いかないなら区分変更申請を

介護被保険者は介護保険料を支払うことで介護サービスを受けることができます。
この介護保険料は保険者である、市区町村に支払宇野ですが、それによって介護が必要なときになると、要介護認定を受けることになるのです。
この要介護認定を受けなければ、介護サービスを受けることはできません。
それでは、介護サービスを提供するのはどこ?ということになるのですが、これが老人ホームであり、介護施設であり、デイサービス事業者なのです。
このことから、介護被保険者、保険者、介護サービス事業者といった3者で介護保険制度は成り立っているのです。
介護被保険者は40歳以上の全国民ですから、まさに国民的事業といっていいでしょう。
そして、先述したように介護サービスを受けるには、要介護認定を受けなくてはいけません。介護認定も大きく7段階に分かれていて、それによって受ける介護サービスの内容も変わってくるのです。
要介護度の認定はどのようにして決まるの?
要介護度は正確には、「要介護状態等区分」というのですが、単に「介護度」という場合もあります。
ここでは一般的な「要介護度」で説明していきます。
要介護度も7段階に分かれます。
それが、要支援1~2、要介護1~5なのです。
ここで要支援という言葉も出てきました。
要支援は要介護よりも軽く、要介護がその名の通り常時介護を必要とする状態なのに対して、要支援は日常生活を営むのに支障があると判断される状態です。
つまり、要介護よりも軽い状態と考えていいでしょう。
そのため、要介護認定を受けた人が介護給付を利用できるのに対して、要支援認定の人は予防給付を利用することになるのです。
予防給付は今の状態を改善する、あるいは維持するためのものです
要介護認定は介護認定審査会が決める
被保険者が要介護認定申請書を提出することで、要介護認定の審査が始まります。
正確にはその前に、専門家の意見書などが必要となるので、まずは診断を受けなくてはいけません。
市区町村の認定調査員が被保険者の聞き取りと専門家の意見書などから判断して要介護度が決定されます。
認定審査は介護認定審査会が一次審査と二次審査に分かれて、厳正に行われます。
要介護度に納得がいかない…
要介護度の区分によって受けることのできる介護差サービスが変わってきます。
在宅介護では、介護ヘルパーや介護士の訪問回数が定められ、デイサービスなどの利用も回数制限があります。
要介護者の家族、つまり介護する側としては、自らの介護の負担を軽くしたいので、できるだけ重い要介護度になることを願う傾向にあります。
しかし、保険者側(市区町村)は、要介護度認定を重くするとそれだけ介護サービスの行政側負担が増すので、できるだけ軽い要介護度にしたいのです。
高齢化が進み、要介護者が年々増えて行く中で、介護サービス事業を円滑に運営するために、要介護度については厳しく認定する傾向(要介護度をできるだけ軽い区分へ…)が顕著となっています。
そうなると、「うちのおじいちゃんはトイレにも行けないのに、要介護度が軽くなっている…」といった不満も出てくるのです。同居など、家族の十分な介護が受けられる状況では、そのような傾向も多くなっています。
要介護度の変更はできる?
介護認定審査会が決めた要介護度が最終決定というわけではありません。
年齢を重ねるごとに、心身が弱り介護を受けなくてはいけない度合いが増えていくことでしょう。
そのため、要介護度を上げるために、介護認定の申請はその都度行うことになります。
ただし、要介護度の認定が出てすぐの申請はできません。
要介護度の変更を行うには以下の方法があります。
・不服申し立て
・区分変更申請
要介護度の認定が実際と違うと感じた場合、要介護度の認定が下りて60日以内に、市区町村の介護保険担当課に不服申し立ての申請をすることができます。
結果として受理はされますが、再認定などの結果を得るのに数ヵ月かかるようです。あまりにもおかしいと思う以外は、使わない方がよいと言えます。
不服申し立て以外の方法として、区分変更申請があります。
こちらも受理されれば30日程度で結果がわかるので、不服申し立てよりも現実的な対応といえるでしょう。
そして、肝心の変更ができるかどうかということですが、その間にさらに状況が悪化した場合は、区分変更できる場合もありますが、要介護度の認定は厳しさを増しているので、変更ができる可能性は低いと考えたほうがいいでしょう。
要介護度が上がることのメリット・デメリット
実は要介護度は上がれば上がるほどメリットもありますが、デメリットも増えてしまいます。
実際にケアマネジャーとして介護者の家族の方とお話すると「要介護度が上がればいいのに」というお話をよく伺います。
しかし必ずしも要介護度が上がればいいということではありません。
要介護度の変更は可能ですが以下のデメリットも知った上で要介護度の変更を検討すべきです。
要介護度の中でもっとも重い介護度は、要介護5となります。寝たきりですべてにおいて介護が必要な状態が要介護5なのです。
つまり、自分で食事や排泄、入浴をすることができずに、これらについても全面的な介護が必要となります。
完全介護であっても、一人について要介護5の人に支給される介護料の上限金額は36万5千円と決まっています。
自己負担は1割ですから、3万6千円を負担することで、介護を受けることができます。
しかし、これでも在宅介護の場合は毎日というわけではなく、食事・排泄・入浴にしても週に何回と決められています。
それ以上の介護を求める場合は実費となってしまい、介護サービス料が跳ね上がってしまうことになるのです。
・要介護度が上がるメリット
要介護度が上がるメリットは、介護している身内の負担が軽くなります。
例えば入浴回数が週に1回だったのが、週に2回になるケースもあります。
訪問介護の場合単純に訪問回数が増えるので、その分自分の時間を持つことができるので、身体的・精神的な負担は確実に軽減されるのです。
また、介護施設などへも優先的に入所できるようになります。
・要介護度が上がるデメリット
より多くの介護サービスを受けることができるようになるので、1割の自己負担といえども、自己負担の絶対額は増えていきます。
それが家計を圧迫することにもなりかねません。
また、介護施設へも優先的に入所できるようになるのですが、入所するにも初期費用が必要ですし、毎月の食事代などの料金も発生します。
明らかに自己負担額は増えますので、年金でまかなうことができなければ、赤字ということになりますし、なによりも初期費用の捻出ができないと入所ができません。
要介護度が上がって、介護する側の負担が軽くなるメリットと引き替えに、自己負担額は大きくなると考えなくてはいけません。
介護の問題は難しく、どの程度まで在宅介護を行う、通所介護を上手に利用する、これ以上要介護度が上がると施設への入所も視野に入れるといった、将来的なビジョンをしっかりと考えておかなくてはいけません。
まとめ
要介護度は上がるほど受けられるサービスなどが増えますが、その分出費も増えるなどのデメリットもあります。
要介護度に納得がいかない場合、変更も可能ですが、デメリットも考えて変更の申請をしなくてはいけません。
介護サービスの自己負担は、原則として1割負担です(収入や状況によって2割負担、3割負担有り)。
仮に毎月10万円の介護サービスを受けても負担額は1万円で済むのです。そのため、誰もが際限なく介護サービスを受けると、介護サービス事業が破綻してしまいます。
そのため、要介護度認定制度を設け、要介護度を7つの区分に分けてそれに応じた介護サービスを受けることとしているのです。要介護度認定は年々厳しさを増しています。
必要な人に適切な介護サービスが行き届くようにするのが、介護保険事業の理念です。
また、介護する側の負担を考えるとさまざまな葛藤が見え隠れしますが、誰もが適切な介護サービスを受けるような健全な介護保険事業となることが望まれます。